有間カオル『魔法使いのハーブティー』を読了し、ブログへの昇華作業も片づけたある日、積ん読から次の1冊を選ぶとあとには風カオル『ハガキ職人タカギ!』だけが残った。カオルにカオル。あら偶然。――違うそうじゃない。ストックがたった1冊。圧倒的…!圧倒的積ん読不足…!(ざわ…ざわ…)というわけで、積ん読を補充するために書店へ出かけた。

 

読みたい本を決めてこなかったから平積みや棚差しを眺めながらぐるぐるまわっていたのだけど、

 

 

 

ミステリー小説、多すぎ。

 

 

 

創元推理文庫ならまだわかる。だけど他の出版社コーナーまで平積みコーナー軒並みミステリー系ってどういうことなの。特に日常系ミステリーが推され気味なのなんなの。こっちはここ最近ミステリー小説がちらちら続いていて頭が疲れたから無心で読めるシンプルなほのぼの小説探しにきたんだよ。ミステリーはもういいんだよ。

 

東大生が問題を作成した謎解き本が売れているっていうし、近年のリアル脱出ゲームのブームとか、こういうものが影響しているのかなと私はにらんでいるけれど、後日知人の前で嘆いていたら、いわく、トリックの意外性、探偵役のキャラクター、物語のメリハリなどミステリーって他のジャンルよりも素直におもしろさにつながりやすい要素が多いのでは、とのこと。ははぁ。メディアワークス文庫や集英社オレンジ文庫、講談社タイガなど、ライトめなレーベルで日常ミステリーがあふれかえるのも、なるほど、それならわかる気がする。

 

ミステリーは嫌いじゃないし、むしろ日常系ミステリーとかジャンルとしては一番好きだけど、だけど無性にコメディとか人情物語みたいな単純明快な小説って読みたくなる。美味しいものしこたま食べたあと結局お茶漬けが一番美味いわ~みたいに悟るときあるじゃん。今。今がまさにそのとき。お茶漬けはどこだ。

 

あちらこちらのミステリーや馴染みの作家に逃げてしまいたいのを我慢して、1時間近くうろうろして、ようやく棚差しから発掘してきた3冊を抱えてレジにむかう。ねこ。食。人情。ユーモア。ほのぼの。感情に直結する物語もいいけれど、こういう、素朴でじわじわと感情に結びついていくような物語も大切にしたいなぁ。お茶漬けフォーエバー。

 

帰りの電車の中で読みかけの本を開く。――あ、これミステリーだった。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。