
実際に“学園カースト”というものを
 体験したのは高校1年生のときでした。
 数学の授業中だったと記憶しています。
友人と談笑しているときに(自習でした)
 たしか初対面の人だったと思うのですが
 「二人顔似てるね。えww 姉妹?ww」
 と、隣から突然声をかけられたのですよ。
「違いますけど…」とビビり気味で答えているときも
 彼とそのまわりがなんだかずっとニヤニヤしていて、
 ああ、バカにされているんだな、と思っていました。
顔も名前もまったく知らない人でしたが、
 丸刈りだったので野球部員だったのでしょう。
 (野球部は強制丸刈りという風潮だったので)
 対して私たちは部員5名のちっぽけな文芸部。
自分が学校で浮いているのは自覚していましたが、
 カーストというかヒエラルキー?を実感したのは
 あのときがはじめてでしたね、瑣末な思い出です。
というわけで、
 青春の傷口をえぐるつもりはなかったのですが
 今回また学園カーストにまつわるおはなしです。
 降田天氏『女王はかえらない』を読了しました。
***
小学三年生のぼくのクラスでは、
 マキが女王として君臨し、
 スクール・カーストの頂点に立っていた。
しかし、東京からやってきた
 美しい転校生・エリカの出現で、
 教室内のパワーバランスは崩れ、
 クラスメイトたちを巻き込んだ
 激しい権力闘争が始まった。
そして夏祭りの日、
 ぼくたちにとって
 忘れられないような事件が起こる――。
伏線が張りめぐらされた、
 少女たちの残酷で切ない学園ミステリー。
※あらすじは文庫裏表紙より引用しました。
***
書店を訪れた際たまたま平積みで見かけて。
 正直、最初タイトル見て『王妃の帰還』(※)
 を思いだして「これは2冊横に並べたいww」
 ぐらいのめちゃくちゃ軽い理由で買いました。
(※)以前読んだ学園カースト小説です。
ところがどっこいこれがなかなかのアタリ本!
 読後まで引きずるハイクオリティな陰湿具合!
 次は明るい小説を読もうと思いました(真顔)
小学校が舞台なので、
 登場人物や展開が稚拙なのかなと思ったら。
誰かを攻撃する時は、
より残酷な表現や方法を選んだ人間が英雄になる。
悪口なら、「太っている」より「デブ」、
「デブ」より「ブタ」。
マキたちを観察するうちに学んだことだ。
小学生の一人称ながらストンと読みやすく、
 子供らしい想いや行動も描写されてますし、
 ギスギスしたクラス風景は臨場感があって
 終始ドキドキしながら楽しく読めましたね。
学校モノなので仕方がない部分ではありますが、
 名前を与えられている登場人物がやや多いです。
 そのわりにはあまり仕事をしない子もいたので、
 欲を言えばそこらへんはスッキリしてほしかった。
真相については、
 個人的にはちょっと無理してまとめた感がありましたが、
 子供という生きもののエグさに対する描写力には大満足。
 読後の胸クソ悪さは素晴らしかったので良作だったかな。
学園ミステリーとして楽しむよりも、
 子供たちの理不尽で未熟な距離感に
 ゾッとする読みかたがオススメです。
高校時代のカースト話で最後にもうひとつ。
同じくらいの時期に私と友人のところへ
 Oさんという女の子が混ざるようになりました。
Oさんは最初私とは毛色の違うグループにいて、
 おそらく内部のトラブルでこちらに来たのだと
 思いますが、2年生になるまで一緒にいました。
おたがい趣味が合うわけでもなかったので
 終始他愛のない話をしていた気がしますが、
 ケンカしたり嫌な気持ちになることもなく、
 クラスが変わってもたまに話したりしたので
 普通の子だったなぁ…と今では思っています。
みんな誰かを好きで誰かを嫌いで。
 友達を維持するのは面倒クサいし、
 ときどき家族が嫌になったりして。
結局カーストなんて関係なくて、
 みんな似たような生きものなんだと思います。