• 作家という病 -『盗作小説』感想

    ジーン・ハンフ・コレリッツ『盗作小説』(鈴木恵・訳)を読む。 かつてのベストセラー作家ジェイコブは、どうしても新作を書けずにいた。小説創作講座で教えるだけの日々に鬱々とし、受講生のエヴァンに怒りと嫉妬の炎を燃やしていた。授業を受ける意義がないとうそぶきながらも、彼の語る小説のプロットは素晴らしいものだったからだ。その三年後、ふとしたことからジェイコブはエヴァンが死んだことを知...
  • 忘れてないか?この娘だって、結局、ばかげたトリツカレ女だったってことをだよ。 -『トリツカレ男』感想

    去年の下半期から、全然読書をしていない。 書評で飯食ってるわけじゃないんだし、しなきゃいけないもんでもないんだけど、明確に原因はあって、把握はしてる。 今年は読書よりも創作の年だった。人生で初めて原稿用紙換算450枚超の長編小説を書いたり、そのあと自分史上最高品質の短編を書いたり。来年はこれを新人賞に送るだとか、もちろんインプットのほうも並行して、今年以上に挑戦の年にな...
  • 随筆、特別展「毒」について

    2022年11月1日~2023年2月19日まで国立科学博物館で開催されている〈特別展「毒」〉に行ってきました。凝ったレポートを書くつもりはありませんが、個人的に学んだこと、おもしろいなと感じたところなどを記録を残しておくので興味があったら読んでください。また、文章にするにあたり購入した図録を適宜参考または引用しています。 まず、前提としてウイルスは「毒」じゃないそうで...

    2022年11月10日

  • あのバウムクーヘンは無事に岐阜へ届いたのか -『見知らぬ人』感想

    エリー・グリフィス『見知らぬ人』(上條ひろみ・訳)を読んだ。 イギリス産ミステリーということで、さすが、話のところどころで紅茶やビスケットが出てくる。思わずこちらも、ミルクティーなんぞしばきながら二転三転のフーダニットを楽しませていただきました。 直前にピーター・スワンソン『アリスが語らないことは』を読んで「あああああ!(こういう男を翻弄する美人)マジで嫌いだわぁ!(^...
  • 随想、『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』について

    Binary Haze Interactiveから出ているゲーム『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』がめちゃくちゃおもしろかったので、考えたことをあれこれまとめておきます。ネタバレあり。とはいえ物語の考察は他所の良質な記事に任せ、こちらはあくまで雑感です。 ENDER LILIES⇒ユリを断ち切る者 ...

    2022年6月1日

  • ホラーとはなにか? – 宮田光『沼の国』

    胡仙フーシェンというキツネがいる。中国の民間信仰に登場する神通力を持ったキツネのことで、たとえば河北省滄州市の楽城県にあった県城の奎星楼には古くから胡仙がいると信じられている。この胡仙は酒を飲んで暴れたり不信心な者に危害を加えたりするとも、また良薬を与えたり盲人の目を見えるようにしてやるともいわれた。 同じように、私たちの国でも妖怪とは総じて凶事と吉事の側面を併せ持つ。まだまだ科学が...
  • 随想、死について

    最近は岡田斗司夫の動画をはじめ、五十嵐律人『原因において自由な物語』だったり久坂部羊『R.I.P. 安らかに眠れ』だったり、どうも死について考える機会が多かった。 思うに、私たちが死をおそれる理由は ①死に伴う痛みがこわい ②今していることができなくなるのがつらい この2点に絞られるんじゃなかろうか。つまり、苦痛と不満である。 おそらく①は...

    2022年5月7日

  • 賢さは、情報を集める技術ではなく精査する能力に宿る -『自由研究には向かない殺人』感想

    ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(服部京子・訳)を読みました。あらすじに「ひたむきな主人公の姿が胸を打つ」とあって、他所でもそのあたりがよく挙げられていたので手にとってみたのですが、広告に偽りなし!次々と浮かびあがる容疑者たちや被害者の秘密、脅迫者の影に翻弄されながらも一生懸命立ちむかうピップには好感しかなかった。相棒となるラヴィとのやりとりも微笑ましい。続編はもちろん買います。 ...
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佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。