• 瀬尾まいこはバイキングのサラダだ -『夏の体温』感想

    気がついたら下半期がはじまっている。 読書ペースは例年どおり月に3~4冊程度だけれど、読書運が悪いのか、今年はあまり感想や考察をあれこれ妄想するほどの良著に出会えていないような気がする。読書記録をふりかえってみても、読後の熱を鮮烈に思いだせる小説はまだ2冊しかなかった。海外のSFとミステリー。どちらもストーリーはさることながら、キャラクターの造形と彼らの織りなす会話の空気やテンポがい...
  • 随想、『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』について

    Binary Haze Interactiveから出ているゲーム『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』がめちゃくちゃおもしろかったので、考えたことをあれこれまとめておきます。ネタバレあり。とはいえ物語の考察は他所の良質な記事に任せ、こちらはあくまで雑感です。 ENDER LILIES⇒ユリを断ち切る者 ...

    2022年6月1日

  • ホラーとはなにか? – 宮田光『沼の国』

    胡仙フーシェンというキツネがいる。中国の民間信仰に登場する神通力を持ったキツネのことで、たとえば河北省滄州市の楽城県にあった県城の奎星楼には古くから胡仙がいると信じられている。この胡仙は酒を飲んで暴れたり不信心な者に危害を加えたりするとも、また良薬を与えたり盲人の目を見えるようにしてやるともいわれた。 同じように、私たちの国でも妖怪とは総じて凶事と吉事の側面を併せ持つ。まだまだ科学が...
  • 随想、死について

    最近は岡田斗司夫の動画をはじめ、五十嵐律人『原因において自由な物語』だったり久坂部羊『R.I.P. 安らかに眠れ』だったり、どうも死について考える機会が多かった。 思うに、私たちが死をおそれる理由は ①死に伴う痛みがこわい ②今していることができなくなるのがつらい この2点に絞られるんじゃなかろうか。つまり、苦痛と不満である。 おそらく①は...

    2022年5月7日

  • 賢さは、情報を集める技術ではなく精査する能力に宿る -『自由研究には向かない殺人』感想

    ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(服部京子・訳)を読みました。あらすじに「ひたむきな主人公の姿が胸を打つ」とあって、他所でもそのあたりがよく挙げられていたので手にとってみたのですが、広告に偽りなし!次々と浮かびあがる容疑者たちや被害者の秘密、脅迫者の影に翻弄されながらも一生懸命立ちむかうピップには好感しかなかった。相棒となるラヴィとのやりとりも微笑ましい。続編はもちろん買います。 ...
  • 梶原恭介はオレステスだったのかもしれない -『マザー・マーダー』感想

    ネタバレ注意! 本記事は矢樹純『マザー・マーダー』の重要な部分について触れていますので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。 矢樹純『マザー・マーダー』を読みました。あらすじに「歪んだ母性が、やがて世間を震撼させるおぞましい事件を引き起こす」とあったので5話編成の長編小説かなと思ったのですが、どちらかというと連作短編集でしたね...

    2022年3月17日

  • ……今私たちに必要なのは……萌え……防御線……ねじりほんにょ…… -『クロストーク』(上下)感想

    ネタバレ注意! 本記事は作者『作品名』の重要な部分または結末について触れていますので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。 コニー・ウィリス『クロストーク』(大森望・訳)読みました。めちゃくちゃよかった。 どのくらいよかったかというと、上下巻、各500Pぐらいあるのを正味3日で読んだし、読んでないときもブリディと...
  • 感想│森川智喜『死者と言葉を交わすなかれ』

    当ブログでは三途川理シリーズでおなじみ森川智喜さんが2020年に上梓された、三途川理シリーズじゃない長編ミステリー。 純粋に三途川理シリーズが好きな私なので正直最初はあまり期待していなかったのですが、結局、後頭部をどちゃくそに殴られた気分です。普通におもしろかった。あたりまえだけど。いや、「普通」ですらなかったな。ミステリー小説であることをフルに活かした1冊だったと思う。森川さんはあ...
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佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説についてあれこれ考察するのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。