本記事は2019年5月にWebマガジン「Books&Apps」が開催した第2回「私のブログ」大賞に応募したものです。文字数に制限があったため応募の際は内容を削り「6選+α」としましたが、落選しましたので10選の完全版をここで供養します。興味があったらどうぞおつきあいください。ちょっとだけ加筆修正もしたけど基本的に本文は執筆時(同年4月頃)のままです。

 

 


 

 

毎晩1時間「勉強時間」と称してビジネス書や学術書などの本を読んでノートに要約をまとめておく、という生活をかれこれ3年ほどつづけているのですが、その3年間に読んだ中で個人的におもしろかったなと思ったものを10冊選んでみました。普段は小説を中心とした読書ブログを運営しているため、末尾には関連したテーマを扱うおすすめの小説も。実質20選

 

 

 

1.ドーナツとは「家」なので穴を残して食べることは可能!? -『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義』

副題にあるとおり、「ドーナツの穴だけを残して食べる方法」について、そもそもなぜインターネットで流行ったのか?という大阪大学大学院経済学研究科・准教授の松村真宏氏の考察にはじまり、数学、経済学、美学、人類学などさまざまな学問の視点から各学問の専門家が本気で考察!さながら大学の講義を聴いているような臨場感で学問の奥深さ・幅広さを体感できる贅沢な1冊。読むオープンキャンパス。

 

たかがドーナツと侮るべからず、趣味で読むにしては専門的で難しい内容ですが、大学進学を控える人だけでなく自分の知識や興味関心を見つめなおすためのきっかけとしてもよさそうです。

 

つまり,現在味わうドーナツが仲立ちとなって,かつて食べたことのあるドーナツが,そしてそのドーナツの穴が,記憶として甦ってくるのである.

 

(P50/L22~24より引用)

 

私はやっぱり「ドーナツとは家である」と結論づけた大阪大学大学院文学研究科・准教授の田中均氏による美学的視点からの講義にときめきましたね。ドーナツは食べたあとも心の中に記憶として存在している。つまり、穴どころかドーナツ自体「残して食べる」ことは可能……!

 

この「美学」をテーマにした森晶麿氏の小説『黒猫の遊歩あるいは美学講義』はじめ〈黒猫シリーズ〉も、本書読了後ならさらに楽しめそう。

 

 

 

 

2.とても生きにくい時代に生まれてしまった私たちへ -『承認をめぐる病』

他者の許しがなければ自分を愛することすら難しい、という現代社会に蔓延する「承認依存」について、精神科医であり批評家でもある斎藤環氏がサブカルチャーやインターネット、震災、うつなど現代社会を語るうえで欠かせない要素を盛りこみつつ処方箋を模索していく書。氏はサブカルチャー愛好家としても知られているそうで、そういう意味では視点が若々しく、20代の読者でも読みやすく書かれているかと。

 

いまや子どもたちの対人評価軸は、勉強でもスポーツでもなく、「コミュ力」に一元化されつつある。かつての教室には――少なくとも筆者が中学生であった約三十数年前の教室には――たとえ寡黙であっても絵が上手い、文才があるなどの理由で、周囲から「一目置かれる」生徒が存在した。残念ながら、いまやそうした生徒には、「カースト下位」にしか居場所はない。

 

(P27/L8~13より引用)

 

2004年、白岩玄氏の小説『野ブタ。をプロデュース』が刊行された当時、私なんかはまさに思春期真っ只中だったので「よくぞ書いてくれた!」という心持ちだったのですが、対してあとから作品を読んだ父や兄(読了時はたしか大学生だった)の評価が芳しくなかったことは今でもよく覚えています。

 

表向きは「多様性の時代」などと耳障りのいい言葉を使いながら、私たちやさらに下の世代は、とても生きにくい時代に生まれてしまったと思う。今なお承認依存に苦しむ人たちが、専門家の言葉から、「コミュ力偏重」の社会を上手くわたり歩くヒントを見つけられますように。

 

 

 

 

3.キャラクター小説界で人気の「霊能動物」を紐解く -『霊能動物館』

狐、狸、猫、鳥、狼……日本古来より人間と共生し、崇められてきた「霊能動物」たちの起源を、小説家でありエッセイストでもある加門七海氏が文献や伝承、そして自身の体験や見聞きしたエピソード等からひとつひとつ丁寧に紐解いていく怪しくも美しい幻想的な1冊。猫はもちろん、近年は狼と狸に心惹かれる私なのでそこらへんとりわけ楽しく読めました。今では日本全国どこでもすっかり定着している狐信仰の源は狼信仰だった(かもしれない)って知ってた?私の知るかぎりでは東京は上野にある国立科学博物館にニホンオオカミの剥製がありますが、これは今後見る目が変わるなぁ。

 

以前、埼玉は川越の氷川神社へ参拝に行ったときに見た「目に見えない力を信じる心の余裕は、日々の暮らしをよりすがすがしく、安定したものに変えてくれるはずです」という看板の文言が今も鮮明に記憶に残っているのですが、古より伝わる知識と信仰心をもってすれば生命あふれるこの世界はこんなにも魅力的に映るのか、と本書を読み終える頃にはきっと実感できるでしょう。

 

鈴森丹子氏による『おかえりの神様』からはじまるシリーズ他、最近ではキャラクター小説ものに神様や霊能動物を扱った作品が多い印象なので、併せて読むと知識や興味関心の奥行きが広がるかもしれませんね。

 

部屋はまだ続きがあるようだった。
この館は思っていたよりも、広く、複雑で、奥行きがある。
色々見てきたつもりでいたが、残りのほうが多いくらいだ。馬は見たのに、牛の部屋には入っていないし、鼠、鼬、猿、猪の部屋にも行き着かない。
一体、いくつの部屋があるのか……。

 

(P300/L1~5より引用)

 

とにかく情報量が多くめまぐるしい印象もある本書ですが、先にも述べたとおり加門氏は小説家でもあられるので文章自体はかなり読みやすいです。その色を強く感じられるエピローグ「出口ではなく、屋上へ」も個人的には好き。

 

 

 

 

4.現役アイドルの伸びやかな感性で名画を鑑賞する -『乙女の絵画案内 「かわいい」と見つけると名画がもっとわかる』

アイドルグループ「アンジュルム」(刊行当時は「スマイレージ」)の現リーダーであり2019年6月18日の武道館公演をもって卒業が決まっている和田彩花氏が2014年に上梓した美術系の新書です。去年再読したのですが、読めば読むほど自分の中で評価がグングン上がっていくのがすごい。肖像画から宗教画までさまざまなジャンルの名画を「かわいい」の視点から筆者の伸びやかな感性で鑑賞・解説する1冊。

 

故・井上ひさし氏の言葉に「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでゆかいに」というものがありますが、彼女の筆致はまさにそれ。自分自身の主観や絵画とのエピソードをやわらかな言葉で語ってくれるので、絵画の鑑賞ポイントだけでなく、好きなものを突きつめるにはどうしたらいいかについてたくさんのヒントを得られます。

 

芸術は何のために生まれたのか。だれがどんな願いをこめて描いたのか。そうした背景にも想いをめぐらせることで、また新たな世界が見えるはずです。

 

(P77/L3~4より引用)

 

あらゆる芸術には鑑賞者である私以前に生みだした作者が存在する。そして作者である彼らは、作者である以前に、ひとりの人間なんですよね。作品を前にしたときこの前提を思いだせる人にはぜひ紅玉いづき氏の小説『現代詩人探偵』も読んでもらいたい。

 

 

 

 

5.その勉強法、哲学者も実践していたかも? -『超・知的生産術 頭がいい人の「読み方、書き方、学び方」』

哲学者で 山口大学国際総合科学部准教授の小川仁志氏が哲学を用いた読みかた、書きかた、学びかたなどの「〈哲学式〉知的生産術」を披露してくださる、私の需要に完全マッチした1冊だったのでぜひ読者のみんなと共有したい。

 

個人的に印象に残っているのはやはり第2章「哲学者の思考の秘密」に記された哲学者・サルトルの勉強法について、でしょうか。

 

サルトルは学生時代からよく本を読み、よくアウトプットしていたのです。それは文章にするだけでなく、口に出してしゃべりまくるということを含めてです。

 

(P64/L7~8より引用)

 

相手が聞き上手であることを利用して私はよくとある知人に読んだ本の内容を延々としゃべりまくっているのでこのあたり似てるなぁと笑ったものですが、

 

彼は高等師範学校で支給される、青色やベージュ色のふつうの紙を折って、ざっと八つに切って作った不揃いなカードを、左から右に、上から下へ余白を残さず、息もつかず、せっかちな書体で――文字が重なり合い、ゆがんだまま――、課題に従ってカント、プラトン、デカルトあるいは自由についてという具合に、読んだ本の内容と自分のメモで埋めつくすのだった。

 

(P65/L5~10より引用)

 

驚くよねぇ、アニー・コーエン=ソラール氏によるサルトルの伝記『サルトル伝』を引用して筆者が「オリジナルカード勉強法」と紹介した勉強法、私が小説以外の本で勉強はじめた頃からずっとやってる方法なんだもん。こんな偶然ある?私は市販のメモ用紙でやっているので「メモ学習」って呼んでます。もちろん、他にも自分自身の中に答えを求めるデカルトの勉強法や、日常のルーティンに勉強を組みこむカントの勉強法、オリジナルの事典をつくるようにノートをまとめるヘーゲルの勉強法など参考になりました。

 

最近、知人に「自覚ないと思うけど、きみが話してくれる気づきって俺が読んだネットの記事とかビジネス書にも同じことが載っていて、つまりゆっくりではあるけどちゃんと自分自身の経験でそこに行きついてるんだね」と感心されたことがあって、それはきっと本書から得た「〈哲学式〉知的生産術」が活きている証拠なのだと思います。

 

哲学という学問は日本ではどうもあまり重要視されていないようですが、たとえば甲斐田紫乃氏の小説『塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています』では一見無意味で無関係に思える哲学の問いが大学で巻き起こるさまざまな謎の答えに結びつくさまを描いています。「考える」という行為を極める哲学はあらゆる学問の、そして人間の、本質ではないかと私は思うのです。もう一度大学で学びなおす機会があったら私が選ぶのは間違いなく哲学。

 

――話が長くなりましたが、アウトプットは苦手、という人はぜひ。

 

 

 

 

6.リスペクトとパクリは同じじゃない -『降りてくる思考法 世界一クレイジーでクリエイティブな問題解決スキル』

クリエイティブ・ディレクターでありブランド・コンサルタントでもある江上隆夫氏による、さまざまな「アイディアの降ろしかた」を記した1冊。変える、なくす、くっつける……手段を知り、可能性を知ることで、あなたの中に今あるアイディアがより魅力的になること請け合い!

 

中でも印象的だったのは「盗む」の章。読書ブログというのはどうしても他者が生みだした既存の書籍が前提で成り立つ存在ですから、作品の魅力を引きだしつつ自分の個性を押しだす匙加減を考えるのに大変有意義でした。音楽業界でもキュウソネコカミが「ビビッた」という曲の中でリスペクトとパクリは同じか?と歌っていますが、本書を読んだ今ならオマージュとパロディとアレンジとリバイバルの違いを説明しつつ持論を展開できる気がする。まっ、サビが格好よすぎるので私が持論を展開する必要はないんですけどね。はい終了!!

 

小説の例でいうと、たとえば西洋の童話なんかはこの「盗む」の章と親和性が高いですね。森晶麿氏の『偽恋愛小説家』や石飛千尋氏の訳によるクリストファー・ヒーリー氏『プリンス同盟 プリンス・チャーミングと呼ばれた王子たち』などはアレンジやパロディの好例だと思います。

 

学ぶは「真似(まね)ぶ」から来ています。

 

(P130/L8より引用)

 

本書にもこうあるとおり、真似とは学びの手段であり、なんらかの形で自分のものにしなければ評価にはつながりません。やたらむやみに引用するだけなら誰にでもできるのです。それ以上のオリジナリティが……この記事には、あります、よね?

 

 

 

 

7.考えるワクワクがとまらない400ページ! -『100の思考実験 あなたはどこまで考えられるか』

イギリスの哲学誌『The Philosophers’ Magazine』の編集長であるジュリアン・バジーニ氏がタイトルのとおり100の思考実験とその考えかたのヒントを綴った、いわば思考実験の問題集あるいは参考書。翻訳は向井和美氏。

 

もちろん、一時期日本でも話題になった「トロッコ問題」をはじめ、「中国語の部屋」「アキレスと亀」「水槽の脳」など有名な思考実験についても言及されています。長年小説ばかり好んで読んできた私が小説以外の本を読みノートをとって勉強をはじめたきっかけとなった思い入れの強い1冊です。ちなみに約400ページ。ほぼ鈍器。

 

もともと思考実験は好きなので一番を決めるのは難しいですが、うーん、当時印象的だったのは「テセウスの船」でしょうか。新しい木材を使って修理した、もともと存在していたテセウス号と、テセウス号から取りはずした古い木材で復元したもうひとつのテセウス号。さて、このとき“本物のテセウス号”とははたしてどちらなのだろう――。

 

著者による考えかたのヒントとしては、

 

どちらが本物のテセウス号かは、直感で考えればあきらかだと思う人もいる。しかし、どちらを答えとするかは、この話をどう語るかによるのだ。

 

(P62/L4~5より引用)

 

としたうえで、

 

しかし、それでは、困った結果になりかねない。なぜなら、人間もまた、テセウス号に似ているからだ。

 

(P62/L16~P63/L1より引用)

 

と、たとえば細胞のサイクルやものの考えかた、記憶など、次々に入れ替わる私たち人間そのものの同一性について波及していきます。2つのテセウス号に“本物”があるのだとしたら、さて、“本物”のあなたとは一体どのあなたなのでしょうか?……いやぁ、ワクワクしますねこういうの!

 

最近だと、一條次郎氏の小説『レプリカたちの夜』とかでこの思考実験に想いを馳せました。かの人気ミステリー作家・伊坂幸太郎氏も「ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなぁ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています」と困惑したクセのある作品なので考えて追究するのが好きな人は併せてどうぞ。

 

 

 

 

8.人はそんなに賢くない -『思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方』

ジャーナリストで世界14ヶ国で翻訳されている人気ブログ「You Are Not Smart」の管理人、デイヴィット・マクレイニー氏が人間の脳にまつわるウソとホントを48の項目で紹介する衝撃の1冊。翻訳は安原和見氏。

 

一度は聞いたことがあるかもしれない「バイアス」や誰でもきっと身に覚えがある「傍観者効果」など今後の日常生活にも応用しやすい知識満載です。私は「バイアス」という言葉、れるりり氏によるボーカロイド楽曲「脳漿炸裂ガール」を聴いて知りました。なつかしい。東京バイアス。ちなみにこちらも約400ページのほぼ鈍器となっております。

 

 

どれも興味深い内容なので一番を決めるのは難しいのですが、読んでいた当時、個人的に勇気づけられたのは「スポットライト効果」ですね。

 

私は昔から社会不安障害の気がありまして、軽度ながら赤面、発汗、恐怖、不安、書痙、人前で普通に話せないなどの症状に長年悩まされているのですが、

 

自分が見られていると感じる場面では、自分のパフォーマンスの長所も短所もすべてチェックされ、批評されていると人は思いがちだ。だが実際にはそんなことはない。

 

(P248/L1~2より引用)

 

という、いくつかの実際の実験結果とともに綴られた言葉で幾分気持ちが楽になりました。

 

人はそんなに賢くなく、またそんなに特別でもないのだ。

 

(P248/L14~15より引用)

 

人前でどうしようもなくこわくなったり不安になったとき、最近は心の中で、この言葉を唱えるようにしています。

 

どれだけ特殊な状況下に見えても人間本質的なところは変わらない、という点で選ぶとすればここで紹介すべき小説は芹澤恵氏の翻訳によるケヴィン・ウィルソン氏の小説『地球の中心までトンネルを掘る』あたりが雰囲気的にあっているでしょうか。

 

 

 

 

9.天才をめぐる組織の物語、あなたはどう落としこむ? -『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』

公開後またたくまに30万PVを超えた話題のブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」をワンキャリア最高戦略責任者でレントヘッドの代表取締役でもある著者・北野唯我氏がよりシンプルで実用的にするためストーリー形式に書きなおしたビジネス書。凡人・秀才・天才という3タイプの人間がもつ異なる才能に着目し、圧倒的に数が多いからこそ凡人は多数決という武器で天才のアイディアを殺すことができる、という論とその打開策を記しています。

 

青野という青年を主人公に組織の話として描かれていますが、読者の捉えかた次第でさまざまな場面に落としこむことができると思います。現に私は本書から自身の読書ブログとその読者層を見つめなおして基本方針を固めるきっかけを得ました。必ずしも組織に属するビジネスマンが読むべきというものではなく、誰でも気になったら読んでみて損はないはず。

 

君の中にも天才はいる。だども、同時に『その天才を殺してしまう秀才』も『凡人』も、自分の中に飼っとる。

 

(P193/L11~12より引用)

 

この「凡人」「秀才」「天才」とは別々の人間をカテゴライズするだけでなく、自分自身の中にさえ共存している、というのが個人的には印象的でした。

 

本書を読む少し前に朱野帰子氏による『会社を綴る人』という小説を読んだのですが、文章への愛だけが唯一の取り柄である主人公・紙屋がまさに凡人の価値観に殺されかけたある種の「天才」だったのではないかと思っています。

 

ここで私はおそらく〇〇タイプです、などと言う野暮なことはしませんが、たとえわかりあえなくとも、どんな人の価値観や才能にもせめて歩みよる努力ができる人間でありたいものです。

 

 

 

 

10.「世界史」と「日本史」はわけて考えるな! -『仕事に効く教養としての「世界史」』

今ちょうど読んでいる途中の本なのですが(2019年4月現在)、4章まで読み終わって、この段階でもかなり勉強になっているので最後に紹介しておきます。「訪れた世界の都市は1000を超え、読んだ歴史書は5000冊以上」という著者・出口治明氏が「この半世紀の間に、人の話を聴き本を読み旅をして、自分で咀嚼して腹落ちしたこと」を記したという世界史の本。仕事がいそがしい知人が「代わりに読んでおいて」と言うので読んでいます。よくあることです。

 

ちなみに著者紹介を読むと、華々しい経歴を経て現在は「ライフネット生命保険株式会社会長兼CEO」とのこと。そして本書「はじめに」には「僕は大学などで歴史を学んだこともなく、歴史が好きなアマチュアの一市民にすぎません」とあり、本編以外のところでもなにかと驚きの多い1冊です。社長なにしてるの。

 

学校で習った世界史の焼きなおしでは決してなく、たとえば日本の歴史ひとつとっても周辺の国々やその情勢・歴史から考える横広がりの世界史として記されているところがやはり最大の魅力でしょうか。ペリー来航の目的は背景に大英帝国とのライバル関係があり、本当の目的とは、日本を開国させることで太平洋航路の有力な中継地点を獲得するためだった。鎖国の影響で日本には外国為替の知識が十分になく、為替政策の誤りによって幕府が崩壊した。かもしれない。ははぁ。

 

グローバルな視点で考えたら世界は違って見えてくる。ものすごく変わって見えてくる。そのように考えたら、世界の歴史の大きい流れを見たうえで日本史を勉強したほうが、理解が深まるのではないかと思います。

 

(P34/L1~4より引用)

 

学校では「世界史」「日本史」とわけて授業が行われますが、地つづきに考えたほうが、覚えることは多くなるはずのに不思議とわかりやすいんだなぁ、と日々実感しています。石川宗生氏の小説『半分世界』の「白黒ダービー小史」という短編の中でマーガレットという女性が「本来、歴史なんてヒトの頭の中にしかないうやむやなグレーなのに、それじゃ困るってことでお偉いさんたちが四捨五入、切り捨てごめんって感じに無理矢理白黒つけたのね」と語る場面がありますが、「無理矢理白黒つけた」結果が「世界史」「日本史」の区分なのではないかと。

 

 

 

 

さいごに

というわけで、2016年から3年間のあいだに読んだビジネス書・学術書・専門書等の中からおもしろかった本10冊の内容と感想をお届けしました。ここまで約8000文字。いやぁ、10選はさすがに長いし飽きるよね。最後まで読んでいただきありがとうございます。おつかれさまでした。

 

読書にまつわるさまざまなインターネットの議論をながめていると必ずノンフィクションの高尚さを説いてくる人がいますが、実際のところ、重要なのは個々のアウトプット能力のほうであってインプットするのにフィクションとノンフィクションで優劣は存在しないというのが私の持論です。なので、今回紹介した本の中に食指が動くものがあったらぜひ、フィクション・ノンフィクションに関係なくまずは実際に手にとってみてください。願わくばそこにたくさんの気づきや学びがありますように。

 

Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。