家族
  • イルカの「スポンジング」は母から娘にしか継承されない -『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』感想

    原田ひ香『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』を読みました。作品を知ったきっかけは「タイトルが絶妙」という書評だったけれど、本当に絶妙。そもそも「原田ひ香」という名前もずるい。 内容は、実家の母から送られてきた小包をテーマにした6編の短編小説集です。結婚するまで実家暮らしだったので私自身は〈母からの小包〉というものに馴染みはありませんが、六者六様の親子のありかたに不思議と自分たち...
  • この小説に、「疑問」ではない感情を見出してしまったら私たちは -『ミラーワールド』感想

    池ヶ谷良夫、中林進、澄田隆司、3組の家族の“主夫”を中心に描かれる差別と葛藤の物語。3組の家族の視点からとある事件、その影響を描くという構成は『明日の食卓』に酷似しますが、これって作者が得意とするフォーマットなんでしょうかね。それとも『明日の食卓』の映画化に味をしめた編集者の指示か。個人的には気になるところです。……え?そんなことより主婦じゃないのかって? ねぇ、なんでこ...
  • 日常小説に需要はあるか? -『傑作はまだ』感想

    「まだふっくらしてるよ。ここの大福、豆が本当にうまいんだ」 私が好きになる小説はいつも決まってなにかを食べている。物語のさして重要ではない場面で、丁寧に、とても美味しそうに。瀬尾まいこ『傑作はまだ』では大福が、主人公の加賀野こと〈俺〉と、生まれてから25年間一度も会ったことのない息子・智をつなぐある種のキーワード、いや、キーフードになっている。「人」を「良」くする、で「食べる」だ...
  • 星空の下、わたしたちは幸せ -『星の子』感想

    !ネタバレ注意! 本記事は今村夏子『星の子』に関するネタバレを含む可能性があるため、作品を読了している、または作品のネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。以上のことに同意したうえでお楽しみください。 初読は2019年12月なんですけど、私年末に読書合宿してまして、そのとき読んだ5冊のうちの1冊だったんですねこれ。せっかく考察がはかどることに定評のあ...
  • 解明は解決にはならない、だけど -『家庭教師は知っている』感想

    青柳碧人『家庭教師は知っている』を読みました。学園ミステリーにとどまらず教師や生徒を主人公に展開する小説は数あれど、本書は家庭教師を主軸にした一風変わった「家庭訪問ミステリー」。家庭とは幸福な絆なのか、それとも、不幸の檻なのか。サクサク読めるのに考えさせられる良書でした。 原田は、首都圏で《家庭教師のシーザー》を運営する会社で働いている...
  • 明日、どこかの食卓で -『明日の食卓』感想

    椰月美智子『明日の食卓』を読みました。「石橋ユウ」を育てる3人の母親。そして「イシバシユウ」虐待死のニュース。ミステリー小説っぽいあらすじに惹かれて購入したのですが実際は“どこにでもある”家族小説または親子の物語です。……まぁ、だからゾッとするんですけどね。 ユウを殺したのは、私ですか? 静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石...
  • 人と人とはトオリヌケ キンシ -『トオリヌケキンシ』感想

    加納朋子『トオリヌケキンシ』を読みました。先々週くらいに書店へ行ったとき例のごとく知人に適当に数冊小説を見繕ってもらったのですが、そのうちの1冊がこれで、私も書架をまわっているあいだに気になった1冊。見れば作者は『カーテンコール!』の加納氏だし、私と知人どちらの目にも留まるということはこれまで一度もなかったので絶対に良作だろうと確信して買ったら本当に良作でした。 ...
  • 別々に大切にするということ -『通い猫アルフィーと海辺の町』感想

    レイチェル・ウェルズ『通い猫アルフィーと海辺の町』(西村和美・訳)を読みました。前作『通い猫アルフィーとジョージ』以来約1年ぶりとなるアルフィーとの再会。新刊が出ていたことをじつはまったく知らなくて、たまたま書店で見つけたときうれしさのあまり「おおっ!」と小さく声が出てしまいました。8月の暮れ、夏の終わりに読了が間に合ってよかった。溶けるような暑さの中、行間からそよぐ涼しげな海風が心地よか...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。