絶望
  • 履き違えている人たち -『真夜中のたずねびと』感想

    『夜市』以来、十数年ぶりの恒川光太郎。Twitterでフォローしている方の「非日常の中に流れる日常に紛れる非日常」という感想に惹かれたので、電子でさっそく読んじゃいました。決して避けて通ることはできない家族の強力なしがらみみたいな部分はバリー・ライガの『さよなら、シリアルキラー』(満園真木・訳)を彷彿とさせたりもしつつ、全体的には罪の根本を問いただす物語なのかなと。加害者にとっても被害者にとっても...
  • 星空の下、わたしたちは幸せ -『星の子』感想

    !ネタバレ注意! 本記事は今村夏子『星の子』に関するネタバレを含む可能性があるため、作品を読了している、または作品のネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。以上のことに同意したうえでお楽しみください。 初読は2019年12月なんですけど、私年末に読書合宿してまして、そのとき読んだ5冊のうちの1冊だったんですねこれ。せっかく考察がはかどることに定評のあ...
  • 奇妙が侵入してくる -『私たち異者は』感想

    スティーヴン・ミルハウザー『私たち異者は』(柴田元幸・訳)を読みました。最近とんと観ていないけど、タモリはさ、今でも「次に奇妙な扉を開けるのはあなたかもしれません」みたいなこと言ってるわけでしょ? でもさ、この小説は違うんだよ、自分のほうから扉開けて入ってくるの。巧妙に、ちょっとずつ、ちょっとずつ。あとはただ穏やかに絶望。こわい。 ミリ単位まで見逃さないリアルタイ...
  • 嫌いだ、泣きたいほどに -『あなたの右手は蜂蜜の香り』感想

    片岡翔『あなたの右手は蜂蜜の香り』を読みました。私は普段「好きだ!」と思った小説しか挙げないし、感想にマイナスな表現は極力使わないようにしているのですが、……悩んだけど、本書にとってこの言葉を使うことは必要なことだと思うから。だから言います。私はこの小説、嫌い。 小説としては粗削り あたしのせいで動物園に入れられたクマの「あなた」を、必ず救い出す。ど...
  • 私たちは残酷で愛おしく、危うい -『トランクの中に行った双子』感想

    ショーニン・マグワイア『トランクの中に行った双子』(原島文世・訳)を読みました。以前読んだ『不思議の国の少女たち』の続編ですが、おなじみジャックとジルを主人公に2人がエリノアのホームに来る前の、ヴァンパイアの世界に行った当時の物語なので前日譚と言ったほうがいいでしょう。現実の世界にありながら非現実の世界によりそった前作に対し、こちらは非現実の世界にありながら現実の世界によりそっていた印象、...
  • 絶望の森を抜けて -『城の王』感想

    スーザン・ヒル『城の王』(幸田敦子・訳)を読みました。読後に思ったこと、考えたこと、感じたこと――そのすべてを言葉にして綴るのは難しく、読み返してみると抽象的で短い文章になってしまったのですが、それでも本書と本書を読んだ私の感想はなにより自分のためにここに残しておきたいと強く思ったので、短くても抽象的でも、ありのままを載せることにしました。読了直後にしたためた感想メモほとんどそのままですが...
  • 『深い穴に落ちてしまった』(イバン・レピラ 著 / 白石貴子 訳)

    高校生のとき、自宅の階段から落ちたことがある。リビングから母が飛びだし2階の寝室で寝ていた父が飛びだしてくるほど大きな音をたてて盛大にすっころび、痣もでき、まぁまぁ痛かったはずなのにどういうわけか当の自分は、んふんふ、と、変な笑い声をあげていた。朝っぱらから。 そういえば小学生ぐらいのとき、雨でぬれたコンクリートの上で転んで膝の皮がペロッとむけたときも...
  • 『イノセント・デイズ』(早見和真 著)

    早見和真『イノセント・デイズ』を読了。数年前に〈このミス〉で見たタイトルの「イノセント(無垢)」にまったく似つかわしくないひたすらに陰鬱とした表紙デザインとあらすじが忘れられず、文庫化したタイミングでいよいよ覚悟を決めて手を伸ばしました。物語としては作中の言葉を借りれば「ステレオタイプ」。日本推理作家協会賞を受賞した作品だそうですが、個人的には物語性ではなくテーマに...
Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。