絶望
  • 私たちは残酷で愛おしく、危うい -『トランクの中に行った双子』感想

    ショーニン・マグワイア『トランクの中に行った双子』(原島文世・訳)を読みました。以前読んだ『不思議の国の少女たち』の続編ですが、おなじみジャックとジルを主人公に2人がエリノアのホームに来る前の、ヴァンパイアの世界に行った当時の物語なので前日譚と言ったほうがいいでしょう。現実の世界にありながら非現実の世界によりそった前作に対し、こちらは非現実の世界にありながら現実の世界によりそっていた印象、...
  • 絶望の森を抜けて -『城の王』感想

    スーザン・ヒル『城の王』(幸田敦子・訳)を読みました。読後に思ったこと、考えたこと、感じたこと――そのすべてを言葉にして綴るのは難しく、読み返してみると抽象的で短い文章になってしまったのですが、それでも本書と本書を読んだ私の感想はなにより自分のためにここに残しておきたいと強く思ったので、短くても抽象的でも、ありのままを載せることにしました。読了直後にしたためた感想メモほとんどそのままですが...
  • 『深い穴に落ちてしまった』(イバン・レピラ 著 / 白石貴子 訳)

    高校生のとき、自宅の階段から落ちたことがある。リビングから母が飛びだし2階の寝室で寝ていた父が飛びだしてくるほど大きな音をたてて盛大にすっころび、痣もでき、まぁまぁ痛かったはずなのにどういうわけか当の自分は、んふんふ、と、変な笑い声をあげていた。朝っぱらから。 そういえば小学生ぐらいのとき、雨でぬれたコンクリートの上で転んで膝の皮がペロッとむけたときも...
  • 『イノセント・デイズ』(早見和真 著)

    早見和真『イノセント・デイズ』を読了。数年前に〈このミス〉で見たタイトルの「イノセント(無垢)」にまったく似つかわしくないひたすらに陰鬱とした表紙デザインとあらすじが忘れられず、文庫化したタイミングでいよいよ覚悟を決めて手を伸ばしました。物語としては作中の言葉を借りれば「ステレオタイプ」。日本推理作家協会賞を受賞した作品だそうですが、個人的には物語性ではなくテーマに...
  • 『ゴーストフォビア』(美輪和音 著)

    みなさんには恐怖症がおありでしょうか? 私は物心ついたときから、 どういうわけかとにかく“人工物”が怖い。 テーマパークにある、 建物の中をまわるアトラクションは苦手です。 人形はもちろん空間そのものがもうダメなんですよね。 視線恐怖症もオープンスペース恐怖症も要因かもしれない。 兄が脱出ゲーム好きで、 私も謎解きは好きな...
  • 『わすれて、わすれて』(清水杜氏彦 著)

    みなさんは、 自分の一番古い記憶ってなんでしょう? 私は幼稚園の運動会で父にふっとばされたことですね。 タイヤ引きみたいな、 園児たちはそれぞれ縄のついた横倒しのタイヤに座って お父さんに縄を引っぱってもらってゴールへむかう競技。 私の父は開始と同時に勢いよく縄を引っぱったのですが、 力を入れすぎてタイヤが傾いて私は後方にすっとびました。 ...
  • 『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン 著 / 市田泉 訳)

    中学生のとき級友の家へ遊びに行ったら、 自宅内にエレベーターがあって驚いたことがあります。 大きくて立派な邸宅ではあったものの、 自分の家と同じく2階建てだったので 階段で登れるのにエレベーターで…!?とも思いましたが、 冷静に考えると介護用かなにかだったのかもしれませんね。 別の級友は3階建ての家に住んでいました。 許可をもら...
  • 『うそつき、うそつき』(清水杜氏彦 著)

    ネットでたまたま見かけた情報なのですが、人は1日に200回も嘘をつくのだそう。なにそれ。もはや毎日がエイプリルフール。 嘘というのはなかなか不思議なものです。「嘘つきは泥棒のはじまり」「嘘ついたら針千本飲ます」日本には古くからそんな言葉もありますし、童話「オオカミ少年」や「ピノキオ」も嘘をつくとロクな目に遭わないぞ、と子供心にこれはひどいと思える展開で...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。