さみしい
  • 優しくするのが恋。赦すのが、愛。-『水たまりで息をする』感想

    高瀬隼子『水たまりで息をする』を読みました。読了から一晩経ちましたが、なんか、すごいものに出会ってしまったなぁという気持ちです。久しぶりに。初めて今村夏子の『あひる』を読んだときみたいな。とても現代的で、かつ寓話的でもあり、まさしく水たまりのような意図的につくられた芸術的な閉塞感。 そういえば、雰囲気は『星の子』に似ているかもしれない。あちらは狂気の中にも親子の愛情があったからまだ救...
  • イルカの「スポンジング」は母から娘にしか継承されない -『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』感想

    原田ひ香『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』を読みました。作品を知ったきっかけは「タイトルが絶妙」という書評だったけれど、本当に絶妙。そもそも「原田ひ香」という名前もずるい。 内容は、実家の母から送られてきた小包をテーマにした6編の短編小説集です。結婚するまで実家暮らしだったので私自身は〈母からの小包〉というものに馴染みはありませんが、六者六様の親子のありかたに不思議と自分たち...
  • 社会なんて人なんて -『料理なんて愛なんて』感想

    料理は、小学生のときに覚えた。 母がパートで夕方まで帰ってこないため、偏食の私が給食を残しておなかを空かせて帰ると、自分でなにかつくらなくてはならない。フライパンでハーフベーコンを4枚焼き、食パンに#の形にのせたらとろけるチーズも上にのせ、電子レンジで1分ほど。トースターでカリカリに焼くよりもこのふにゃふにゃ感が好きだった。名前はない。この名無しの創作料理を帰宅後はいつも一人で食べて...
  • あなたの想いの額縁は、私がつくる -『額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート』感想

    冒頭からいきなりゲームの話なんですが、デレステの鷺沢文香ちゃんのソロ楽曲に「銀河図書館」というものがあるんですよ。 https://www.youtube.com/watch?v=AEmfBH2qj70 でね、その「銀河図書館」の歌詞について考察を書いた人がいるんですけど、それがめちゃくちゃ良いわけです。 「銀河図書館」の歌詞には「四角い空...
  • 鼻は、人間の奥底につながる無防備な穴だ -『透明な夜の香り』感想

    千早さんの小説は高校生だか大学生だかの時分に『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』を読んで以来だったんですけど、第一印象と変わらない、幻想的で蠱惑的な美しい文章でした。拠点となる洋館には主人公・一香以外の女性はおらず、調香師の朔、探偵の新城、庭を管理する源さんとまわりは男性が固めますが安易にハーレムとか唯一の女性である一香をチヤホヤしないそれぞれの距離感が絶妙で良いですね。 ...
  • 星空の下、わたしたちは幸せ -『星の子』感想

    !ネタバレ注意! 本記事は今村夏子『星の子』に関するネタバレを含む可能性があるため、作品を読了している、または作品のネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。以上のことに同意したうえでお楽しみください。 初読は2019年12月なんですけど、私年末に読書合宿してまして、そのとき読んだ5冊のうちの1冊だったんですねこれ。せっかく考察がはかどることに定評のあ...
  • 私は1人の人間についてどれだけのことを語れるだろう -『壁の男』感想

    たとえば、こんなシチュエーションを想像してみる。「あなたが尊敬している人物は誰ですか?」と面接官に問われた私は、適当な名を挙げ、さらに具体的な理由を説明しようとしている。そのとき私は、1人の人間についてはたしてどれだけのことを語れるだろう――。貫井徳郎『壁の男』を読んで最初に浮かんだ感想はそれでした。私は今このときほど他人の人生によりそったことなど、じつは一度もなかったんじゃないか、と。 ...
  • 像をめぐる崇拝と崩壊 -『チェーン・ピープル』感想

    三崎作品といえば中学生だか高校生だかの頃『となり町戦争』から『廃墟建築士』まで首をかしげながら読んだものですが、10年ぶりに『チェーン・ピープル』を読んだらめちゃくちゃ好きなやつだったので『バスジャック』と『鼓笛隊の襲来』と『廃墟建築士』は絶対に読みなおさなきゃ(使命感)と思いました。 正義の味方 相変わらず、私にとって彼はヒーローであり、戦い続ける...
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佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。