2022年11月1日~2023年2月19日まで国立科学博物館で開催されている〈特別展「毒」〉に行ってきました。凝ったレポートを書くつもりはありませんが、個人的に学んだこと、おもしろいなと感じたところなどを記録を残しておくので興味があったら読んでください。また、文章にするにあたり購入した図録を適宜参考または引用しています。

 


 

まず、前提としてウイルスは「毒」じゃないそうです。生物学上、生物に該当しないから。というわけで今回の特別展でウイルスは扱っておりませんという但し書き。なるほどなーと思ったのでメモ。

 

英語で毒は「ヴェノム」「トキシン」「ポイズン」と三種類の定義があります。ヘビやハチが生産して注入する毒がヴェノム、植物などが持っている毒はトキシン、毒性のあるもの全般はポイズン。トキシックってドラゴンズクラウンとかオーディンスフィアとかのアイテムだっけ?なるほどたしかあれトリカブ(トリカブト)とか使ってたもんな。

 

生物が持つ毒には攻めるための毒守るための毒の二種類があるそうです。せめる。とまもる。そうだ、ももで覚えよう。

 

攻めるための毒:餌を捕るための道具として進化してきた毒。 例)ハブ、オニスズメバチ

守るための毒:外敵から自分を守るために利用する毒。 例)毛虫、ウミウシ、フグ

 

つまりももが漫才をするときは、

 

せめる。「ハブ顔やろ!」

まもる。「ウミウシ顔やろ!」

せめる。「オニスズメバチ顔やろ!」

まもる。「フグ顔やろ!」

 

こうなる。あ、ややこしくて全然覚えられなかったわ。

 

基本的には非力な生きものや逃げることのできない植物がまもる。を担当するって認識でいいんだと思います。ところで、フグは自らテトロドトキシンをつくることはできず、テトロドトキシンを嗅ぎわけて積極的に摂取することで毒を蓄積させるんだって。古いミステリーとかサスペンスで殺したい相手の料理に毎日ちょっとずつ毒を入れて……みたいなのあるけど、あれで相手が抗体持って逆にハイパー超人になったら犯人ってどんな顔するんだろうね。あれ、私、敵に塩送っちゃってない?って思うよね。

 

さて、突然ですがここで日本三大有害植物を覚えようのコーナー!コールアンドレスポンス!

 

ドクゼリ!Sey!\ドクゼリ~!/
ドクウツギ!Sey!\ドクウツギ~!/
2階席のみんなも!トリカブト!Sey!\トリカブト~!/

 

と、頭の中の日本武道館が大盛りあがりしている最中、うしろにならんでる女が彼ピッピにむかって「これ覚えたら賢いって思われそう~♡」って言ってました。日本三大有害植物にやたら詳しい女は無人島でしか需要ないと思いますが、やっぱ人間いつ無人島に漂流してサバイバルはじまるかわからないもんね。覚えておいて損はないよね。

 

一方、脳内日本武道館では世界三大有毒植物を覚えるコールアンドレスポンス。

 

マチン!Sey!\マチン~!/
ベラドンナ!Sey!\ベラドンナ~!/
2階席のみんなも!ゲルセミウム・エレガンス!Sey!\ゲルセm……ガンス~!/

 

最後だけ貴族みたいな難しいやつ出てきて草。草だけに。うしろにならんでる女はなぜか世界三大有毒植物のほうにはノーコメントでした。「これ覚♡」言ってやれよ。むしろ期待してたわ。マチンの種子に含まれるストリキニーネという物質は毒性が強く、アガサ・クリスティーの小説でも毒殺で使用されたとか。

 

ところで話は急に変わるけど、昔お母さんに「ジャガイモに芽が生えてきたら食うな」って言われませんでした?私は言われた。で、なんだろうって実際のところ全然わかってなかったんですけど、新芽にはソラニンという有害成分が含まれているそうです。件数自体は少ないものの、食中毒の被害者数は国内最多。『ソラニン』って漫画なかった?あれもしかしてジャガイモで食中毒になる話?

 

あとはウメライチアンズなども未熟なうちは有害って話でした。これらに含まれるアミグダリンは食べると体内でシアン化合物が発生して中毒になる可能性があるのですが、天日干しにして分解することで無毒化できるんですって。なるほど、だからじーちゃんもお母さんも縁側でウメ干してたんだなぁ。なんか散々置き場所に困ったあげく外に放置してんのかと思ってた。

 

個人的に意外だったのはインゲン。加熱調理をしないとだめなやつだそうです。うしろで別の男が「俺これは知ってたわ~(ドヤ顔)」ってめっちゃ女にマウント取ってたけど、うるせぇ口にインゲンつめるぞ。黙って学べ。

 

あとね、楽しかったのは毒きのこのコーナー。なにを隠そうきのこに関しては食べるのも学ぶのも好きなのでテンション上がりました。世界に存在するきのこのうち半数は有毒という衝撃の事実。そう考えると普通に山できのこ採ってきて食卓に出す田舎のジジババこわすぎない?

 

きのこの毒もさまざまですが、アルコールと一緒に摂取すると悪酔いを誘発させる毒なんてのもあるようです。ホテイシメジキララタケなんかが代表例だそうで。ホテイシメジの圧倒的ロック感とキララタケの圧倒的セクシー女優感。完全に布袋寅泰と明日花キララのせい。

 

植物関連でいえば、もっとも古く(?)著名であり症状が明記されている事例として、ソクラテスの処刑が紹介されていました。「国家が信じる神々とは異なる神々を信じ、若者を堕落させた」という全然よくわかんない罪で死刑に処されるソクラテス。ドクニンジンの汁を飲んで、弟子たちと対話しながら亡くなったそうです。映画のクライマックスシーンかな?

 


 

あ、ここからはスマホで撮ったかわいい動物たちの写真です。

 

コモドオオトカゲ。オスの喧嘩は相撲をとって決着をつけます。顔も相まって、もうほとんど地方のイキッたヤンキー。唾液に毒があって、野牛は咬んだあと死ぬまで1ヶ月待ったあと食べるよ。咬むだけ咬んでその後忘れちゃうやつとかいないのかな。

 

 

唯一卵を産む哺乳類として有名なカモノハシだけど、実際に見る機会ってないよね。オスのうしろ足(黄色の矢印部分)に毒があるそうです。そんなことより、今度はうしろにいた女が鳥の剥製見て「これ死んでるの?かわいそう~」ってとなりの彼ピッピに言ってて、こいつこのあと飯食いに行っても彼ピッピの前で「かわいそう」とか言いながらむしゃむしゃ鶏肉食うんだろうな~って思いました。黙って学べ(2回目)。

 

 

コブラの猛毒にさえ耐性を持ち、なんなら積極的に捕食していくラーテルの兄貴。プロレスラーのような風格。コブラ食いたいから毒が効きにくい身体になるわ、って気軽に遺伝子変異させるのあまりに強キャラすぎて思わず撮ってしまった。剥製なのに口元で唾液がしたたってるところに作り手のこだわりを感じて謎に興奮した。

 

 

アズマヒキガエルを捕食するヤマカガシ。二人してあまりにつぶらな瞳なので「ごめん、かわいいプリケツだったんで噛んじゃった」「ええで」って言ってるようにしか見えない。ちょっと~あずまん(アズマヒキガエル♀のあだ名)もまんざらでもない感じじゃ~ん。でもこのあと死ぬ。カガ氏(ヤマカガシ♂のあだ名)ヤンデレタイプだった。

 

 

字面しか知らなかったスベスベマンジュウガニ。無人島に漂流したとして、浜辺でこれ見かけたら「マンジュウだしいけるやろ(ぱくー)」くらいのテンションで食べちゃうよね。そして死ぬ。小さいから満腹感もないし、めちゃくちゃ損した気分のまま地獄に行くことになるのでせめて15匹くらい食って満腹になってから死にたいところ。ところでスベスベマンジュウ要素どのへん?

 

 

たぬきのうんち。たぬきが好きなので撮りました。ここで写真を撮っていたのは私だけだった。たぬきはうんちもかわいいなぁ!

 


 

以上です。

 

総括すると、攻めるため守るためとあったけど攻撃も結局突きつめれば自己防衛の一種で、そうなると毒って基本はそれぞれが身を守るためのものなんだなと。それを人間が、人間の尺度で勝手に敵と見なしたり嫌ったりするのはあまりに傲慢だよなぁなんて思いました。

 

最後に、この特別展に関わった研究者の方々へのインタビューを紹介したパネルから個人的に印象に残った言葉を抜粋して終わりたいと思います。

 

幼稚園の頃に突然目が腫れて病院送りになったことがあったのですが、アマガエルを触った手で目をこすったのが原因だったようです(アマガエルは粘液に刺激性のある弱い毒を含みます)。生き物と接する上では、触ったらよく手を洗う、触った手で目や鼻を触らない、といった基本的なことが大事だと思います。――動物研究部・吉川研究員

 

初対面でまず聞かれるのは「で、どうやって毒きのこを見分けるの?」…そんな方法ありません、と言ってもまず納得されません。これまできのこ図鑑を多数監修していますが、食毒が不明な種のほうが多いので、できれば「食・毒」に関する記述は無しにしたい、と思うこともしょっちゅうです。――植物研究部・保坂研究員

 

よく、「最初に〇〇(毒のある生物)を食べた人は偉い」といった表現がありますが、最初に食べた人が倒れた後、それでも食べた人の方がもっと偉いのかもしれません。ただ、その知識を後世に伝えた人が居てこそ、今の私たちが毒を扱うことができるわけですから、記録してくれた人の方が偉いのかもしれません。――人類研究部・坂上研究員

 

 

特別展「毒」オフィシャルサイト
https://www.dokuten.jp/

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。