最近、北野唯我『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』を読んで、めちゃくちゃ意訳すると「人間には大きく天才・秀才・凡人の3タイプがいて彼らの物事の判断基準は根本的に違う(凡人は共感性とその圧倒的な数で天才を殺すことができる)、同じ土俵に立とうとせず、自分のタイプと武器を理解したうえで相手の主語にあわせたアプローチで組織や世界をまわそう!」みたいな話なのですが、それはさておき読んだ結果今さらこのブログの基本方針が決定したのでご報告します。ちなみにこの本の内容についてはまったく触れないのでご注意ください。

 


 

そもそも、私が毎回「めちゃくそに叩かれたらどうしよう」と戦々恐々しながら小説の感想をブログで公開している理由は、娯楽としてのおもしろさではなく読んだあとの考察におもしろさがある小説にこそ脚光を浴びてほしい!と常々考えているからなんですよね。

 

インプット→アウトプットというのはもちろん読書以外の体験からも可能で、情報を取りこんで再構築するというのはじつは存外に簡単でもあります。ケーキをほおばる瞬間を想像してみてください。一口食べてみて「おいしい!」と言うのも、いわばインプット→アウトプットです。

 

さて、このインプットとアウトプットのあいだにもう1工程「考える」という作業を導入してみるとどうでしょう。

 

先ほどの例でいえば、ケーキをほおばったとき思ったまま「おいしい!」と言う前に、なぜ・どのように美味しいのかを考えてみる。大好きなイチゴがふんだんに盛られているから。クリームが甘すぎなくて甘党でない自分でも食べやすいから。今日は特別な記念日だから。考えるという過程を踏んだ「おいしい!」には個人の性格、経験、価値観などが介入します。

 

言うのは簡単だけど、瞬間的に浮かぶそれら感情の根拠を考えるのって、自分のことなのに他人事みたいでもあって、楽しい。アウトプットの真価とは本来ここにあるんじゃないかと私は思うのです。そして、 インプットとアウトプットのあいだに「考える」の工程を組みこめる最良の情報素材って、他でもない小説だって思いません?

 


 

小説の構造を考えると、まず作者のある目的があって、物語というオブラートに包まれたのち、小説となって読者の手に届きます。ということは、本当の意味で小説を楽しむためには読者はこの過程を逆行して自ら作品を分解し「考えて」答えを落としこむ必要がある。同じ本でもビジネス書や自己啓発、ハウツーなんかはインプット→アウトプットの一直線になりがちなのでこれは個人的にはあんまりおすすめしない。

 

ところが厄介なことに本来小説とは大衆のための娯楽であり、小説すべてが必ずしもテーマを持っているわけではありません。一方、明確なテーマを持った作品はそれはそれで古典文学だったり芥川賞を受賞するような小難しい話だったり、ああいうジャンルとして慣れた人でないと読むのも一苦労。

 

誰でも手にとりやすい大衆小説を前提としたうえで、私はこんなふうに感じました・考えましたという等身大の“感想”を綴る読書ブログがあれば、それが手引きとなって小説はもっと“使われる”ものになるのではないか。そんなふうに考えました。

 


 

しかしまぁ、読書ブログというのはどうもおもしろくない。

 

私にも人並みに向上心というものはあるので有名な読書家や読書ブログの動向をチェックすることも一応はあるけれど、本の内容を説明してテーマを明確にする「紹介文」のほうが圧倒的に多いように感じます。

 

一方、自分の記事を読み返してみると、そもそも自分のアウトプットが最優先事項なので本(小説)を紹介・プレゼンするという点では圧倒的に弱い。ただ、私は連想ゲームが好きなので、感想には他の小説や漫画、ゲーム、映画など自分が他に興味のあるものをなるべく絡めるように意識していて、それは読者にとって小説から別の媒体にまたがってテーマをより深堀りしていけるというメリットになるかもしれない。

 

小説を探している大半の人が求めている「本の内容」を書く人は他にもたくさんいるけれど、Mugitterは一個人の感想を提供することで読者の1人格となり、ブレインストーミングの代行・サポートならできるかもしれない。先に紹介した 『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』 の「天才・秀才・凡人、根本的に違う3者なのに世界が崩壊しないのはそれぞれの中間に異なる両者の要素を持ったアンバサダーがいるから(意訳)」というあたりを読んだときにとうとうそんな考えに至りました。

 

 

とはいえ、興味がない人間の話なんて誰だって聞きたくないので、こんな一個人の感想を聞いてもらうにはまず〈麦〉という人間に興味関心をもってもらう必要がある。そのために私が心がけることはこの3点。

 

・独特の着眼点を持つこと。
・元小説家志望の経験を活かして、感想もまた1つの物語のように提供すること。
・読者の1人格を担うので、口調はやわらかく、親しみやすく、なにより楽しそうに書くこと。

 

結論としてはこう。

 

つまり基本方針は、こう。

 

いつもどおりだった

 

それじゃ、基本方針に則って私は読書に戻ります。解散!

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。