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最近「シミルボン」というサイトに登録しまして、これ、プロフィールの中に「麦を構成する10冊」という欄があるんですよ。それで、これまでの読書人生をふりかえりながら今ぽつぽつ本を登録しているんですが、そういえばこういう話題ってまだ記事にしたことなかったなと。初歩の初歩っぽい話題なのに。というわけで書きました。自分のつまらない価値観をガラリと変えてくれたマジの良著なので本当は人に教えたくないんだけど、ここから、この5冊が違う誰かの人生も変えてくれることを願って。

 

 

 

「学校で習ったやつ」で終わらせたくない -『あらしのよるに』

何年生のときだったかはもう覚えていないけど、国語の教科書に載っていたおはなし。小中高と好きな科目は「国語」と言いつづけた私が、国語を、ひいては“物語”というものを好きになったきっかけ。今の私をつくった本当に最初のとっかかり。

 

教科書にはヤギとオオカミが「あらしのよるに」という合言葉を決めてあの小屋を出ていくところまでしか載っていなくて、このあとの展開を想像するのがとっても楽しかった。このあと2匹はどうなってしまうのだろう。長年の疑問に答えが出たのが、きむらゆういち『小説 あらしのよるに』を読んだとき。無事に再会した2匹を見たときのあの全身が熱くなってゾクゾクッとした感覚は今でも鮮明に覚えています。

 

なんと、ヤギだと思っていた相手はオオカミだったのだ。

 

(P26/L7より引用)

 

小学校のときに教科書で読んだおはなしだから、と油断してはいけなかった。小説版を読んだのは中学生だか高校生だかの時分でしたが、それでも目が離せない展開の数々。あの頃には想像もできなかった現実。困難。苦悩。物語の行間を想像することの楽しさを教えてくれた大切な1冊です。「学校で習ったやつ」で終わらせたくなくて高校生のときには読書感想文も書きました。私と『あらしのよるに』の思い出はこれからもつづいていきます。

 

 

 

 

こういう「はじまり」があってもいいんだ -『ぐるぐるまわるすべり台』

登校して開口一番出る言葉が「帰りたい」。無気力系中二病ペシミストと化していた私の 黒歴史 中学時代を支えてくれたのが中村作品。中村航氏を知ったきっかけは表紙の鮮明なオレンジに惹かれて買った『100回泣くこと』だったけど、中学時代に読みふけった中で一番好きなのはこっちかな。

 

八時半、、、

と、僕は嘘を言った。

だけどその時間になったら、僕は自分のための新しい歌を歌おうと思う。

 

(P116/L14~16より引用)

 

ゆったりとした青年の一人称にほのぼのしながら最後には「はじまり」を強く意識させられるおはなしです。「はじまり」。どこか押しつけがましい雰囲気をもつ言葉だけど、本当はこういう「はじまり」があってもいいんだよな、と読後は心が軽くなります。

 

タイトルの「ぐるぐるまわるすべり台」は作中にも登場するビートルズの「ヘルタースケルター」から。ビートルズに興味をもって曲を聴くようになったのもこれがきっかけだったっけ。ビートルズの曲は「Help!」が好きだけど大学時代の友人がきっかけで今は「ペニーレイン」も好きだな。でも秋になると無性に「イエスタデイ」聴きたくなるさは異常。

 

 

 

 

人生のバイブル(2代目) -『トリツカレ男』

好きなことを好きと想いつづければ、言いつづければ、やりつづければ、いつか必ずどこかで人生と交差するポイントがある――今のそういうマインドをつくってくれた、いしいしんじ『トリツカレ男』はまさしく、今の自分を構成するとても大切な1冊。「人生のバイブル」という表現があるけれど自分にとっての人生のバイブルは間違いなくこれ。500円で買える約150ページの小説に人の一生を変える衝撃があるってすごくない?

 

ジュゼッペ君、きみは、たしかに無茶な男だけれど、とてつもない勇気をもっている。

 

(P120/L11~12より引用)

 

なにかに夢中になると寝ても覚めてもそればかり、文字どおり「トリツカレ」てしまう男・ジュゼッペの物語です。オペラ、三段跳び、サングラス集め。人はときに彼を愚かだと笑うけれど、彼の前にペチカなる女の子があらわれたとき、彼のすべてが色と光をもって物語の舵をとり、前へ前へと進んでゆく。この愚直なほどの前進が心をもみくちゃにしてくれるのが心地いい。

 

 

高校生ぐらいのときに出会って、以来ずっと人生の節目節目に読んできたのですが、どこかのタイミングで原因不明の紛失事件に遭い、今あるのは2代目です。本をくりかえし読むという行為を覚えたのも、同じ本を2冊買ったのも、この本がはじめてだった。これからも私の宝物としてこの人生にきっとさまざまな伝説をつくっていくでしょう。

 

 

 

 

本を「使え」と教えてくれた人 -『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。 20代で身につけたい本の読み方80』

大学生のときに近所の書店で見つけたのがきっかけだったかな。当時、私は日本の現代小説しか読めない呪いにかかっていたのでこうしたいわゆる「実用書」とか「ビジネス書」と呼ばれる類の本はまったく興味がなかったし大学生活において読む必要があってもちっとも楽しくなかった。ついでに、古典作品も海外の翻訳小説も興味なし。――この呪縛から解放してくれた恩人がこの1冊、千田琢哉『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。 20代で身につけたい本の読み方80』だったのです。

 

まず、本は丁重に扱うべきであるという固定観念を破ってみましょう。

 

(P184/L1より引用)

 

タイトルのとおり著者が80の“本の読みかた”を紹介する本で、それまでにも関心するところは多々ありましたが、私がもっとも衝撃を受けたのは79個目の本の読みかた。終盤も終盤。

 

場合によっては自分がグラッときた一節が書いてあるページをビリビリと破って、残りはゴミ箱に捨ててそのまま行動に移してもいいのです。

 

(同/L12~13より引用)

 

本を愛する数多の読書家たちの中でこんなこと言う人いた?少なくとも私のまわりにはいなかった。まるで頭をガツン!と殴られたような衝撃でした。読書ってこんなふうに親しみをもって自分のペースで思うとおりにやっていいんだ。それがわかった途端、実用書も、古典も、海外小説も、臆することなく手にとれるようになって。昔から作家やジャンルに特別こだわらないという意味で「雑食」という言葉を使っていましたが今や興味さえあれば本はなんでも読むワンランク上の雑食になってしまいました。間違いなく、今の自分の読書スタイルに影響を与えた1冊です。

 

 

 

 

いつも少しの遊び心を -『どんぐりと山猫』

いわゆる「文豪」「文学」と称される分野の小説は昔からどうにも苦手なのですが、唯一、ちまちま読んでいるのが宮沢賢治。きっとここで『銀河鉄道の夜』とか挙げておくのが王道なのでしょうが、私は、賢治の書く猫が好きです。まぁそれは賢治の「猫」という掌編が影響しているのですが。猫に対してツンデレな男を見るのが私は最高に萌える。みんなはどう?

 

それはさておき、「どんぐりと山猫」は怪しいハガキをもらった少年が差出人の山猫を探しに山へ入ったところ、彼が裁判長を務めるどんぐりの面倒な裁判に手を貸してほしいと頼まれ、知恵を貸してやるおはなし。読むたびなんとなく映画「となりのトトロ」を思いだしてしまいます。

 

けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。

 

(P20/L8~10より引用)

 

大人びた雰囲気もありながら、しかし、子供心も失っていない主人公・一郎。彼の精神バランスは理想的で、ちょっぴり寂しいラストはどれだけ大人になっても童心を忘れてはいけないな、といつも考えさせてくれます。少しの遊び心。そういう人間でありたい。

 

 

 

 

人生を変える出会いがありますように

改めてふりかえってみたらやっぱりどれも最高。読後の記憶が褪せないわ。こうしてみると、小中高大そして成人後と、なんだかんだ節目節目で定期的に価値観ぶっこわれてるんだなぁ私。そしてスキマスイッチの「全力少年」のごとく積みあげたものをぶっこわして今の価値観と感性を持った私がいる。子供の頃から私は自分のことが大嫌いで、今だって好きとは言えないけれど、「まぁ悪くないじゃん」と認められるようになってきたのでこの5冊には感謝しかありません。

 

そして、今私にできる精一杯の恩返しは、きっと出し惜しみなんかせずに好きな本を「好きだ!」と叫んで、できるだけたくさんの人の目を読書の世界にむけさせることだと思うから。だから、もしもこの5冊の中に惹かれるものがあったら、みなさんもどうか実際に手にとってみてください。あなたの人生にも本との素敵な出会いがありますように。

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。