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猫に鏡を見せてはいけない――。
なんておはなしはご存知でしょうか?

 

なんでも昔、
猫に鏡を見せると化け猫になるといわれていたそうで。

 

鏡を見ている猫は化け猫だ、
とは聞いたことがあったのですが
調べてみたら上記が正しいみたいですね。

 

ウチの愛猫は鏡のある私の部屋へ連れていくと、
ときおり鏡に映った自分を凝視していることが。
人相(猫相?)も悪いので本当に化け猫かもしれない(笑)。

 

驚いた様子も見せないので
普通のことなのかと思っていますが、
みなさんは鏡を見つめる猫を見たことありますか?

 

そういえば、
犬や猫は鏡に映った自分を“自分”と認識できないそう。
逆にその認識ができる生きものの中で意外なのが、イカ。

 

タコの擬態能力にも驚かされますし、
イカもタコも結構すごいんですね…美味しいし。

 

そんなわけで、
今回は“化け猫”のおはなしです。
高橋由太氏『猫は仕事人』読了しました。

 

 

 

良くも悪くも〈水のような〉小説


 

 

悪を討つ化け猫たちの物語、いよいよ開幕!

 

時は幕末。
江戸本所深川に化け猫の〈まる〉は住んでいた。

 

春らんまん。
駄猫ライフ満喫中のまるに、
町娘姉妹の秘話が降りかかってきた。

 

悪い奴らに騙されて、
骨までしゃぶられる人間たちを見て、
「ゆるせない!」と仲間だった化け猫たちも立ち上がる。

 

まるはもう、
仕事人稼業からは足をあらい、
のんびり暮らすはずだったが……。

 

※あらすじは文春文庫HP「作品紹介」および
※文庫裏より内容を編集して掲載させていただきました。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167902292

 

 

 

歴史にとにかく興味がなく、
時代小説なんてじつはこれまで
まったく読んだことがなかったのですが。
主人公がなんと化け猫(!)ということで、
入口としてはいいかなと初挑戦してみました。

 

率直に感想を言うと、
至極あっさり読めました。
読後「あれ、もう終わり?」と拍子抜けしたくらい。

 

化け猫を題材にしているあたり、
もしかするともともと私のような時代小説初心者とか、
ライトユーザー向けのおはなしなのかもしれませんね。
事実読みやすさは時代小説初心者としては抜群でした。

 

 

 

個人的には、水のような、というか。
腹にたまっても舌に味として残らなかったんですよね。

 

もちろん作品がつまらないというわけではなく、
おはなしに感情移入もしたし好きなキャラクターもいます。
猫の視点から人間の悪を見ることで思うこともありました。

 

ただ、
感想を書こうとすると主題がイマイチ浮かびません。

 

これ文句を言っているわけではないんですよ。
詳しくは次の章で 説明 言い訳をしたいと思います。

 

 

 

なにかと“仕事人”すぎて損をしている


 

 

考えてみたのですが、
私が読後拍子抜けしてしまった理由は主に3つ。

 

・タイトル回収が遅め
・「爽快!」に至るまでの助走でメンタルが力尽きる
・肝心の“仕事”シーンが予想外のあっさり仕上げ

 

おはなしがつまらないというのではなく、
むしろ「超いいところなのにぃ!」という
消化不良?物足りなさ?が残念でなりません。

 

続編が数冊刊行されているところから察するに
時代劇の1話分ぐらいとして書かれているのでしょうが、
時代劇1話分で収めるにはあまりにもったいなさすぎる。

 

 

 

まず主人公のまるですが、
元仕事人で正体は化け猫、なのに、ねずみが怖い。
このギャップだけでも充分かわいいんですけども。

 

とにかく見せ場の“仕事”シーンが終盤すぎる。

 

しかも8ページ(推定)。
駄猫もしくはP109のドライな部分しか印象に残らず、
まるの葛藤を考慮してもモヤモヤしたものが拭えず。

 

 

 

次に町娘姉妹のくだり。
前にテレビ番組「スカッとジャパン」を見ていたときに兄が
「スカッとするまでの話にイライラしすぎてスカッとしない」
と言っていたのですがまさにそれでした。むなしさしかない。

 

ネタバレになるので詳しく書けませんが、
化け猫の設定も諸刃の剣すぎちゃってね。
自己満足になってないかと思ってしまう。

 

まるや化け猫たちをとりまく連中を
あくまでモブとわりきれればいいのですが、
人間に感情移入するとやりきれないのでおすすめしません。

 

 

 

上記にも絡んできますが最後に“仕事”シーン。
ここまでやっておいてあまりにあっさりすぎる。
しかもあっさりなのに文章にスピード感もない。

 

思わず目パチクリしました。
なんていうか、スッ、と終わった気がする。

 

たしかに「必殺仕事人」とか観てませんでしたけど、
ああいうシーンって重要な描写じゃないんですか…?

 

有能な仕事人だったようなので
ササッと終わったのかもしれませんが、
どちらかというと、淡々と、という印象でした。
もっと熱くてもいいと思ったけど素人意見でしょうか。

 

 

 

「期待を込めて」という便利な言葉


 

 

思っていた以上に長々と文k…、
要望要望をね!書いてしまいましたが!
続編もあるようですし期待を込めてといいますか。

 

先述したように私は歴史が苦手ですが、
歴史背景や難しい用語はとくになくて、
感情移入できるほど人間も魅力的だし、
時代小説の入口としてはよかったと思っています。

 

次作くらいは読もうかな。
次作もこの調子だったら別の時代小説にチェンジで。
ゴリゴリしていない良作ご存知の方いたら教えてください。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。