cat gray photo

 

 

 

世は空前の猫ブーム。猫による経済効果「ネコノミクス」は2兆円を超えるといわれ、その飼育数は犬を超え形勢逆転!というニュースも記憶に新しいです。無難な世間話の1つに犬派?猫派?という議論がありますが、ウチでは犬も猫も飼っているのでどちらか一方を支持するのは難しい。

 

猫を飼ったきっかけは、兄が猫派だったことと、近所に野良猫の保護団体の方が住んでいたことから。野良育ちだからなのか、孤高というかまったく甘えてくれません。本当はトラなのかもしれない。顔がトラのようだし。足スリスリとかを期待していた兄はショックのため家を出てしまいました…本当は結婚したからです…オメデトウ…。

 

ウチに来てもうじき3年ぐらいだと思いますが(適当)キミは一体いつ甘えだしてくれるんだい?いや真顔はいいから。遠くからめっちゃ真顔でガン見しなくていいから。

 

<●><●> オマエヲミテイルゾ

 

というわけで、レイチェルウェルズ『通い猫アルフィーの奇跡』(中西和美/訳)読了です。

 

 

 

猫の手は本当に借りることができる?


 

飼い主の老婦人を亡くし、ひとりぼっちになった猫アルフィー。帰る場所もなく空腹でさまよい続けたすえ、とある住宅地にたどり着いたアルフィーは、そこで“通い猫”として生きようと決める。だが訪ねた先の住民は揃いも揃って問題だらけ。世をすねた無職の男に育児疲れの主婦、デートDV被害者――そんな彼らに、いつしか1匹の小さな猫が奇跡を起こす!?全英絶賛、ハートフル猫物語。

 

※あらすじは文庫裏より引用しました。ハーパーコリンズの特設サイトより詳しい紹介文が読めます。
http://www.harpercollins.co.jp/alfie/

 

 

 

書店の平積みでたまたま見かけて購入。猫目線の文章はチャーミングで読みやすかったはずなのですが、読了までになぜか1週間ほどかかってしまいました。体感的には導入と中盤でちょっとグズついたかなと。でも終盤の魅せかたはすさまじいです。Chapter32でピンと糸が張ったかと思うと、Chapter33でブチッと糸が切れ息ができなくなる。あとは最後の行まで延々と泣きつづけていました。泣きすぎて目は腫れるし頭痛になったぐらい。導入と中盤ダレたことなんてこれでチャラにできるわ。

 

 

 

主人公は猫のアルフィーで、彼はもちろん魅力的なキャラクターなのですが彼が気をもむ人間たちがこれまた魅力的でいい。個人的にはアルフィーとジョナサンの関係が見ていて 萌え おもしろかったけれど、数年前までクレアと似た環境にいたので彼女の後半からのエピソードは胸が痛む。

 

最低の結婚を経験して、わたしのことを求めてくれる人なんてもう現れないと思ってた。でもジョーは違ったの。
(中略)
わたしは彼を愛しているし、ジョーもわたしも幸せよ。

 

アルフィーや友人・ターシャの心配もすごくわかる。だけど、クレアの気持ちもまた、わかるんですよね。

 

猫の手だろうがなんだろうが、苦しくてつらいときは差しだされた手にすがっていい。頼っていいし、甘えていい。そのための手なのだから。

 

 

 

世界を救う超人だけがヒーローなのか


 

「猫だろうと人間だろうと、ぼくみたいな思いはしてほしくないんだ。思いやりがどれほど大事か思い知らされた。
(中略)
苦難を乗り越えるためにいちばん肝心なのは思いやりなんだ。だれにとっても」

 

アルフィーを見ていると、FF9の主人公・ジタンを思いだすんですよね。

 

オレは自分の手が届くところは守りたい、って思ってる。
できてるかどうかは別だけど それが、オレの基準なんだ。

世界は誰にとっても、自分を中心に360度見わたした範囲内が“世界”で。もともと〈ヒーロー〉のあるべき姿というのは、テレビや漫画で見るような大それた活躍ではなく、アルフィーが言うような“思いやり”の姿勢なのだと思います。

 

アルフィーが出会ったそれぞれの人間を見てわかるように、幸せや苦しみの形は人(猫)によってさまざま。どちらが幸せ・苦しいという差はないはずなんです。そして、同様に“思いやり”の形にも差はないはず。1つの国を救うことと友人の支えになること。たとえばこのどちらも“思いやり”の形だし、どちらが正しいとか崇高だとか、そんなの、ないと思うんです。

 

「ぼくみたいな思いはしてほしくないんだ」
「自分の手が届くところは守りたい」

 

こんなヒーローに私もなりたい。

 

 

 

家族の絆は〈血のつながり〉ではない


 

読んでいて思いだしたことがもう1つ。昔読んだ新聞の投稿欄でこんなおはなしがありました。詳しい境遇は忘れてしまったのですが、自分には生みの親と育ての親と「母親」が2人いるということを悩んでいる子に対して、うろ覚えですが、「生んでくれたお母さんと、育ててくれるお母さんと、お母さんが2人もいるというのは幸せなこと」というようなことを言ってくれた人がいたとかって話だったかと。

 

「家族」という言葉は、必ずしも血のつながりを指す言葉ではありません。アルフィーは“通い猫”として4軒の家を行ったり来たりしながら4軒すべての住人を「家族」と呼んで大切にしています。彼を見ていると家族って、心のつながりのことを指す言葉なんだなぁとしみじみ。

 

震災などがあった際、ペットを連れて避難所を訪れる人に難色を示す方もいるそうなのですが、ペットも家族の一員だと大切に想っている方々の気持ちも汲んでいただいて、おたがいに“思いやり”で。なにかしらきちんとした対策が立てられるといいんですけどね。

 

 

2017年8月3日に加筆修正しました。

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。