三色団子は三色ゆえに「三色団子」である。

 

これ、CDアルバムの話だけど。

 

音楽好きの知人が以前、アルバムとはその曲順も趣向を凝らした“作品”なのに、と、昨今の音楽シーンにおけるバラ売り(買い)の風潮を嘆いていた。

 

「どれか1曲だけ聴くのでもいい」と、かつてアルバムリリース時にコメントしていたのはスキマスイッチのボーカル・大橋卓弥氏だっただろうか。彼のコメントは印象的で好感がもてたけど、これはあくまで一度でもアルバム全体を聴いたうえでの楽しみかたで、アルバムをランダム再生するというのも、やっぱりなにか違うと思う。

 

知人の話を聞いたときまっさきに思いだしたのは乙一氏の『GOTH』という小説。一度は手放したものの、やはり手元に…と思いたち文庫で再度手に入れたものだけど、文庫版は分冊され収録作品の順序もまったく違っていてひどくがっかりしたことを、今でもずるずる引きずっている。単行本当時の話の並び順もまた、作品を形成する大きな要素だったのだと、『GOTH』の文庫を見るたびに思う。

 

たとえば三色団子の赤色だけを食べて、「三色団子はおいしい」と言えるんだろうか。赤・白・緑をすべて食べたときにはじめて「三色団子はおいしい」と言えるんじゃないだろうか。

 

ある程度の数が集まれば、好き嫌いが生まれるのは仕方のないことだ。突出して聴く/読む曲や物語があってもそれ自体はいいと思う。ただ、彼らが“作品”として世に送りだしたものを、想いを感じるために、それらはなにひとつ欠けてはならないのだ、と。

 

考えながら、音楽プレーヤーの再生ボタンを押す。

 

アルバムの1曲目がはじまる。

 

2017年10月19日に加筆修正しました。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。