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7月某日、岩手に旅行へ行ってきました。なにゆえ突然の岩手かというとじつは一度は宮沢賢治記念館に行ってみたいなぁと常々思っていたから。トントン拍子で憧れの聖地に立つことになってしまって「え?いいの?本当に?」と戸惑いを覚えつつ本当に行ってしまったので今回は初岩手・宮沢賢治に想いを馳せる旅の感動と反省を記しておきます。

 

 

 

徒歩は狂気の沙汰

某日11時頃に新幹線に乗りこんで岩手県は花巻へ。始発で行くのもいいなぁとか最初はキャッキャウフフ言っていたくせに前日はHellow Sleepwarkersのライブに行っていたのでもちろん起きられなかった。道中は読みかけだった松崎有理『5まで数えるを読んで過ごしました。…宮沢賢治を読めよそこは!って今になってはじめて思い至ったけれど時すでにお寿司。ちなみに駅弁は鮭といくらのやつを食べました。

 

15時頃には花巻に到着。まずは駅で地図を確認して…おお、地図が手描きだ。地元の学校の子たちが授業とかで描いたのかな?ふむ、駅からそう遠くなさそうだしバスとか最悪歩きで行けるだろ。少し遠いけど温泉街もあるみたいだし泊まるのにも困らないな、よしよし。

 

 

 

甘かった。

 

 

 

最終的に温泉街に行く予定だったからレンタカー借りておいて本当によかった。普通に車じゃないと行けない距離だった。歩くとか正気か!

 

 

 

 陽だまりと夜想曲(ノクターン)

車を降りると憧れの〈山猫軒〉が目の前に…!あの『注文の多い料理店』に登場する洋食店ですね。入口にはどこかのサイトで見たとおり原作と同じ文言。かわいい。こんなにも原作に忠実でなおかつ敬意を払った実写化を私は他に知らない。

 

本当はお店の中も見たかったけれど、なにぶん到着が15時、最終入館が16時30分、閉館が17時と時間に追われていたので写真を撮って目に焼きつけて宮沢賢治記念館のほうへ。正直中に入るまでの勇気がなかったというのもある。人見知りとか視線恐怖症ってこういうとき心底嫌になるわぁ。

 

 

 

木漏れ日が降りそそぐ道を歩きながら、そういえば「木漏れ日」という言葉は日本独特で他国にこれを言いあらわす言葉はないと聞いたな…とか思っていると、宮沢賢治記念館の入口が見えてくる。

 

左手にまず『よだかの星』を彫った彫刻。

 

最近になって青空文庫で読んだ作品だけど、彫刻のよだかの表情を見ているとスマホ片手にボロボロ泣いたあのときの感動がよみがえってきて胸がじんわり。

 

さらに進むとかわいらしい『猫の事務所』がお出迎え。顔を晒すわけにはいかないのでここに写真は載せられませんが主人公・かま猫の気持ちになって「(この職場)異議あり!」したポーズで撮ってもらいました。

 

 

 

館内は撮影NGということでおとなしく見学。出かけにメガネを紛失したので展示を見るのに苦労したけど、賢治が石好きであったこと、チェロが弾けたこと(セロ弾きの ゴーシュ 賢治!)など新たな発見があって、改めて、あらゆる知識を文学に昇華した人だったのだなとますます賢治や作品のことを好きになりました。

 

賢治の詩については知識がとんとないのだけれど『噴火湾(ノクターン)』という詩のフレーズは胸にくるものがあってしばらくのあいだあの詩の前に佇んでいた。

 

わたくしの感じないちがつた空間に
いままでここにあつた現象がうつる
それはあんまりさびしいことだ
(そのさびしいものを死といふのだ)

 

クラムボンに代表されるように宮沢賢治といえば独特のネーミングやオノマトペだと思っていたけれど、彼の感性をとても身近に感じられる一節だった。今後は彼の詩作品も読んでみようかな。

 

 

 

記念館を出て緑の中を降りる。途中美しい桔梗や愛らしいフクロウの街灯に目を奪われながら下へやってくると見えてくるのは陽を浴びて鮮やかに輝く花壇。賢治が設計したものを再現した南斜花壇・日時計花壇だそう。カメラを向けると日時計に光のカーテンが降りてまるで賢治本人が降臨したかのような神々しさを感じました。夏の暑さをほんのひとときでも忘れるほどの美しさだった。

 

 

 

 

 それはおしりだった

最後に宮沢賢治イーハトーブ館へ寄り道。時間的に中をまわることはもう不可能だったので売店だけチラッと。お土産にTシャツとタオルを。

 

宮沢賢治関係ないのでざっくり書くけれど、その日泊まった旅館めちゃくちゃ親切にしてくれたし朝食のフレンチトーストと牛乳が最高に美味しかった。リピーター不可避。居心地がとてもよかったのでまた泊まりに行きたい。

 

フレンチトーストと牛乳の興奮冷めやらぬなか鈍行で帰ることに。赤い目玉のさそりや鹿踊り、リアル銀河鉄道にも出会えてシャッターを切る手がとまらない。これおしり部分じゃないのと思ったときにはもうSLは出発していた…oh…カムパネルラ…。

 

その後ひたすら終点まで乗って、仙台で牛タンを食べ、本を補充し、福島まで行ったあたりでさすがにもういいかなと新幹線にシフトしてラストスパート。トラブルもなく無事に帰宅。楽しかったです。めでたしめでたし。

 

 

 

 

リベンジはあるのか

以上、岩手レポでした。思いつき&限られた時間内での散策だったからゆっくりまわることはできなかったもののそれでもたしかに得るものがあった旅だった。唯一の心残りは宮沢賢治童話村かな。入口が銀河ステーションとかもう素敵すぎる。これは次回のお楽しみですね。

 

それではまた、岩手レポリベンジでお会いしましょう。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。