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学生時代から病院が大の苦手です。

 

もともと人とコミュニケーションをとるのが絶望的に下手クソなの
開口一番に一言で症状を説明したあとはもう「はい」しか言えない、つらい。

 

診察室で問診を受けるのが恐怖なので、
具合が悪くても自主的に病院に行くことはありません。

 

実際に行くのはこわいですが、
前回に続いて医療ミステリー読了です。

 

 

 

作品の雰囲気については前作の記事を参照。
今回は各話についての感想から書きますね。

 

 

 

甘い毒:

 

子供は親の背中を見て育つというか、
自分たちの想像以上に両親を見ているね。

 

香川に対しての行動も奥さんと娘では違う。
そして香川自身それぞれ接する態度が違う。

 

俗にいう「夫婦はしょせん赤の他人」なのか。
血のつながった子供には勝てないというのか。

 

治療だけでなく奥さんとの関係も修復しよう。

 

 

 

吸血鬼症候群:

 

高齢化社会と叫ばれる昨今この話は痛い。
美由紀の勤める病院の描写は胸に刺さる。

 

身寄りのない生活保護対象者を受けいれる。

 

それはたしかに善人的な方針に聞こえるけど、

 

何してもクレーム言われない人を診ることで
国から確実に医療費をもらえる〈ビジネス〉

 

そういう目で見ることだってできるか、むぅ。

 

美由紀のような医師・看護師がいてほしい。
金を吸うだけの〈吸血鬼〉はいないでほしい。

 

 

 

天使の舞い降りる夜:

 

医師は治療の知識・技術こそ持っているが、
神ではないし魔法使いでもないし万能ではない。

 

医師である以前に人間であり、悩み、成長する。
それは〈天才医師〉の鷹央にしても変わらない。

 

頭の中にありとあらゆる医療知識を
詰め込んでいる私がなにもできないんだ!

 

医療の現場で避けることのできない「死」という壁。

 

人は、いつもできることを模索している。
ひとたびそれが見つかればそこにしがみつく。
それは淳たちのような子供ならなおのことだし、
「救えること」にしか向きあえない鷹央も同じだ。

 

それでも「治せない」と「向きあわない」は違う。

 

自分にも救えない人がいるっていう事実と
向き合わないといけないんですよ。

 

「強さ」と「弱さ」は対義語だ。
片方が存在してはじめてもう片方が成立する。

 

己の弱さ・相手の弱さ、そういったものを包みこむ。
そういう強さであふれる場所であってほしいと思う。
病院という場所は、絶望の地では、ないはずだから。

 

 

 

前作の記事で「病は気から」という話をしましたが。

 

今作は騒動の中心に、
患者ではなくそのまわりがいた印象を受けました。
被害者・加害者どちらも“誰も悪くない”優しい事件。

 

今作には副題がついていますね。
副題は「ファントムの病棟」です。

 

ここに収録された“誰も悪くない”優しい事件。
これはすべてファントム=幻なのでしょうか。

 

現実世界にそれを求めるのは、
雲をつかむような話なのでしょうか。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。