Underwater photo

 

 

 

医療ミステリーでありながらサクサク読めます。
読感は松岡圭祐先生の“万能鑑定士Qシリーズ”のよう。

 

シリーズ最新刊ですが、
前作までと雰囲気がやや異なる印象を受けました。

 

前作までは謎と病を結びつけることで事件を解決する
鷹央と小鳥遊の成長していく姿も描かれてきましたが
今回は各おはなし“謎”に力を入れて書かれています。

 

これまでほど考えさせられる文章もなく、残念です。

 

それから、
前作まで恒例だった各おはなしごとの扉絵。
なぜだか今回はありませんでした(目次のみあります)。
ポニーテールの鷹央はかわいかったです( ^ q ^ )

 

おはなしは3話収録されていますが、
3話目が中編で1・2話はあっさり終わった印象です。

 

以下、各おはなし感想。

 

 

 

閃光の中へ:

 

“呪いの動画”によって自殺を図った女子高生のおはなし。
こういう類のコンテンツはいつまで経っても絶滅しませんね。
交通機関の優先席で平然と電話している人を思いだしました。
自分の意図に関係なく周囲の方に発症のリスクを与えている。
考えてみるとゾッとします…マナーはしっかり守らないとですね。

 

なにが『普通に考えたら』だ。
そんなもの、『呪いの動画』ってやつを否定する証拠にはならないだろ。

 

鷹央のこういうところが好きです。
最終的にはいつも医学できっちり否定するけど(´・ω・`)笑

 

 

 

拒絶する肌:
男性に触られた瞬間に肌に異常をきたす女性のおはなし。

 

「(略)はじめて手を繋いだのも、
お付き合いがはじまってから二ヶ月ほど経ってからでした」

 

うぶな中学生同士の恋愛のような話を電子カルテに打ち込みながら、
舞は背中に痒みを感じはじめる。

 

(中略)
言葉に詰まった雅恵に、墨田がオブラートに包んだ表現で助け舟を出す。
雅恵は頬を紅潮させながら、かすかに顎を引いてうなづいた。

ああ、まどろっこしい。

 

研修医・舞の視点で描かれる診察シーンからはじまりますが、
人によってはこの舞の心情でだいぶ精神ダメージを負います。
精神科の診察で内心こんなふうに思われていたら悲しいです。
読んだあとでロカールの交換原理というのを思いだしました。
人が何かと接触したら必ず双方向の移動がこ起こる、か。
手洗い・うがいは大事です、みなさんも、気をつけましょうね!

 

 

 

密室で溺れる男:
密室で溺死した病院理事長の息子のおはなし。
他の2編に比べてミステリ色が強いです、人が死にます。
全ページ数の半分ほどを使った中編なのですが…ふむ。
長さのわりに真相があっさりしていて物足りない感じ。
次回は長編になるそうですがこのままで大丈夫だろうか。

 

 

 

ここまで読んでいただければわかるとおり、
読んでいてグッとくる文章や考えさせられるテーマがありません。
前作まではある程度の考察が書けたと思ったのですけれども…。

 

鷹央と小鳥遊が作中にて「変わった」「実力がついてきている」と
言われるように今回は2人の成長の集大成?的な雰囲気があって
まるで魅力の1つがスルッと抜けた物足りなさが残る読後感でした。

 

とはいえ1・2話は前作まで同様の雰囲気。
個人的には大目に見ても★★★の評価です。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。