sea night photo

 

 

 

たまに、
絶妙なタイミングで本に出会うときがあります。

 

先日人とおしゃべりをしているときに
話題にした場所が出てくる本だったり。
先日テレビで見かけたニュースと同じ
事件や出来事を題材にした本だったり。

 

今回もそんな絶妙なタイミングで出会いました。
知念実希人氏『天久鷹央の推理カルテⅣ』読了です。
(※サブタイトル「悲恋のシンドローム」割愛しました)

 

 

 

 

mugitterでは第1巻から読みつづけている、
安心と信頼の天久鷹央シリーズ最新刊です。
もちろんなにも心配していませんでしたが、
今回も安定の読みやすさ・おもしろさでした。

 

のちほど各話感想で述べますが、
今作で扱われていた病名などが
最近たまたま耳にしたもので…。
今まで以上に深く考えながら読みました。
さすがにこれは作者の意図ではないと思いますが。

 

表紙の鷹央の表情からもわかるとおり、
春の気配がほんのりしているくらいの、
冬の終わりのはじまりみたいな雰囲気。
うっすらした雪をギュッと踏むような
悲しげではかない感じの3編でしたね。

 

以下、各話感想です。
(プロローグ・エピローグは割愛しています)

 

 

 

 

※【 】内ネタバレ要素を含むため白字表記です。
  任意で【 】内を反転してお読みください。

 

 

 

 

迷い込んだ呪い:

 

恋をするたびに原因不明の激痛に襲われる、
亡くなった元恋人の“呪い”なのだろうか。
恐怖に苦しむ女性と“霊能力者”のおはなし。

 

以降ちょっと寂しいおはなしが2編続く中で、
終わりかたがかわいらしく好きなEDでした。

 

個人的には、
佐山さんのキャラが少し弱かった印象。
短編のキャラなので仕方ないのですが、
茶目っ気もあるようなのでもうちょっと
彼女のペースに呑まれていたかったです。

 

ここで登場する【子宮内膜症】という病気。
まず思いだされたのは【先月子宮内膜症で
あると公表したJuice=Juiceの金澤朋子さん】。

 

このとき私は【子宮内膜症】が
具体的にどういうものなのかは
恥ずかしながら知識が乏しくて。
だから読書を通じて理解ができて良かったです。

 

私事ですが私【ハロヲタ】なので、
今回の【かなともの件】心配していたのですよ。
秋恵さんともどもゆっくりでも快復してほしい。

 

 

 

ゴミに眠る宝:

 

相談者の近所にあるゴミ屋敷。
あるときそこを訪れた男子学生が長期不在に。
彼はゴミ屋敷の住人に殺されてしまったのか。

 

一部まったく当たっていませんでしたが(※)
おおよそは予想できるシンプルな展開でした。

 

家をこういう状態にする住民は、
精神疾患を患っていることが多い。
一番多いのは強迫神経症だ。
物を捨てるということに対する恐怖が強く、
ため込んでしまうんだ。

 

真実を知ってからこのセリフに戻ってくると、
仮に精神疾患でなかったとしても悲しいなぁ。
とにかく作品を作り妻子を供養しなければ
という想いの呪縛が管理を追いつかなくしちゃったのだろう。

 

(※)
堺夫婦の仲が悪いのは絶対フラグだと思ってました。
まさかのなにもなかったオチ…怪しかったのにッ!笑

 

 

 

瞬間移動した女:

 

深夜に自室で殺された看護師。
しかし遺体は翌朝に港で発見された。
遺体は瞬間移動した?一体どうやって?

 

「もう私はこの事件に関わらない」と宣言する鷹央。
「お前がこの事件を解決するんだ」と託された小鳥。

 

鷹央には解けない謎。
小鳥には解けるという謎。

 

この仕掛けが素晴らしかった。
素晴らしかったと同時に、とても、切ない。

 

私はどちらかというと鷹央派というか、
正直これまで小鳥に関してはあくまで
おはなしの“語り手”として見ていて。
だけどこのときばっかりはやられました。
小鳥はとっても強くて優しい男だなぁと。

 

 

 

今作で扱われた題材は共通して偏見をもたれやすかったり、
登場人物がみんな「自分なんか」と思っていそうだったり、
なんだかとてもデリケートな作品だったように感じました。

 

「私はたしかに超常現象が好きだけど、
なにもそれが存在すると盲信しているわけじゃない。
ただ科学的、論理的に否定できるまで、
そういうものが存在しないとは言い切れないし、
そういうものがあったら嬉しいなと思っているだけだ」

 

どんな眉唾な話だろうと、
先入観を持たずまず彼らの“事実”を“事実”として認める。
そのあとで“事実”を分析して自分なりに理解しようとする。

 

鷹央が毎回、
あたりまえのようにやっていること。
それは病気に限らずとても大切なことですよね。

 

Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。