match fire photo

 

チャーリー・N・ホームバーグ『真実の魔術師』(原島文世 訳)を読みました。今年の1月から読んできた『紙の魔術師』『硝子の魔術師』の続編にして完結編!物語は前作から2年くらい年月が経っているけど、シオニーが相変わらず優秀ゆえに「自分1人でどうにかできる」と過信してどんどん墓穴を掘っていくので、まだまだ青いなぁと年長者はハラハラしながら見守っていました。若さがまぶしい。

 

 

 

生涯記憶に残る最高のラスト

魔術師実習生のシオニーは、来月に迫った紙の魔術師の最終試験の準備中。だがその試験官は、愛する師匠である紙の魔術師セインではなく、彼を毛嫌いするベイリー師が務めることになってしまう。そんなシオニーのもとに、以前、彼女やセインらの命を狙った邪悪な血の魔術師が、護送中に逃亡したという報せが届く。彼女だけが知る魔法の真実を駆使して、シオニーは敵と対決を試みるが……。〈紙の魔術師〉三部作、完結篇!

 

――文庫裏より

セインとの恋に一喜一憂するシオニーは少女のようで(実際の年齢もまだ「女子」に括れる範囲かな?)少女漫画を読んでいるときのような甘酸っぱく微笑ましい気持ちにさせてくれるのですが、同時に、最初はライラとの一騎打ち→シオニーvsグラス、セインvsサラージ、それぞれ別々の敵と対峙→最後には師弟が気持ちを1つに強敵と闘う、という少年漫画のような流れも熱く、3部作全体として見れば読者を飽きさせない、よい構成だったといえるでしょう。とりわけ今作の戦闘シーンはシオニーだけが知る“真実”の効果もあって色や音を鮮明にイメージできるほどの描写で、読んでいる最中に身体がカッと熱くなるほどの白熱っぷりでした。映画館で映像として観たらきっと映えるだろうな。

 

そして特筆すべきはなんといってもクライマックス!最終的にはこうなるだろうな、という予感があっただけにエピローグ的な18~19章は文字を追いかける視線が何度ももつれて心臓バクバクいわせながら夢中になって読みました。ああ、何度読んでもセインのP316からの言いまわしどれも素敵だ。心の中で万歳三唱しながら本を抱きしめちゃう。引用していつもどおり「ああああああああああ!(^ω^≡^ω^)」したいけど、これ絶対自分で読んだほうがいいからがんばって我慢します。必要以上には描かず、かといって不完全燃焼にはならない、絶妙なタイミングでの終幕。ナイス塩梅。このラストシーンは生涯記憶に残りそう。

 

新キャラにも触れておきましょう。ベイリー師はイメージが完全に某スネイプ先生だった(※個人の感想です)。シオニー目線のおはなしなので終始嫌なヤツみたいに描かれていたけれど、冷静に考えて、昔自分をいじめていたヤツ=セインが当時バカにしていたくせに結局は自分と同じ道に進んで、いっちょまえに実習生なんか世話していて、しかもテメェの都合でその実習生をこっちによこすなんて状況、そりゃあ、ああいう態度にもなるわ。もちろん実習生のシオニーには関係ないことだし私情をはさまず公平に接するべきなのはわかるけど。アヴィオスキー師もそうだけど、デレた先生陣はみんなかわいいので、私は最終的にベイリー師を許した。P300の微笑みかわいすぎかよ。

 

ベネットは終始雑に扱われていてとにかく不憫だった。魔術師になって幸せにおなり。応援してる!

 

 

 

切除師とはなんだったのか

さて、ここまで好意的な感想を述べましたが、じつは本書、文句なしの満点!――というわけではありません。本を閉じて最初に感じたのは「本当にこのまま“完結”してもいいんだろうか?」という一抹の不安。「完結篇」と銘打つわりに、回収されていないフラグとか、疑問点もあるんです。

 

1.ジーナについて

今回、登場人物の欄にシオニーの妹・ジーナの名前が記載されており、実際シオニーとジーナのあいだでちょっとしたすれちがいがあるのですが、主要人物としてジーナの名が挙げるほどこれ重要な話だった?よくある姉妹ゲンカというか家庭問題の類だし、公衆の面前でシオニーにひどい言葉を浴びせたわりに最後はわりとあっさり仲なおりしてしまったし、セインとの恋に関してはここが障壁になるのかと思っていたから拍子抜け。

 

2.ライラについて

前作までのライラって、シオニーに氷漬けにされて、そのあとグラスがどこかの小屋に大事に置いていたんだけど最終的にそこからなくなっていたという状況じゃなかったっけ?それっきり、本書で一応名前は何度か出たものの、結局どうなったの?放っておいて大丈夫なの?まぁ私が答えとなる記述を見落としているだけなのかもしれないけれど。

 

ネタバレ注意!1作目の内容に触れているので上記内容は任意で反転してお読みください。

 

3.切除師について

“邪悪な”切除師というのはこの3部作で名前が出た人物ですべてなの?たった3人だけなの?目的はなんだったの?次なる敵があらわれる危険性はないの?そもそも心臓が必要な理由ってなんだったの?こんなに切除師のこと理解できてないのって私がバカだからなの?

 

あと1~2冊くらいつづけて〈切除師とはなんだったのか〉というところを深掘りしてくれたらすっきりしたんじゃないかなぁと個人的には思いますが、まぁ、今のところ単純に私がいろいろ読みこぼした説が濃厚なので、しばらく経ったらまた改めて3部作、最初から読みなおします。

 

 

 

また映画化したときにでも

よかったところ、気になったところ、それぞれありましたが、なんだかんだ〈紙の魔術師〉シリーズおもしろかった。ファンタジーは普段あまり縁がないジャンルなのでとっておきが見つかってうれしい。完結、しちゃったのかぁ…名残惜しい。

 

以前も書きましたが、ディズニーが映画化権を取得しているということで、小説では3部作すべての表紙で顔出しNGを貫いたセインがさてどれほどイケメンなのか、ふふ、今から楽しみでなりません。映画化したらもちろん観にるつもりです、し、小説も読みなおしたいですし、それぞれ感想も書けたらと考えていますので、そのときはまたおつきあいしていただけるとうれしいです。

 

では、またそのときまで。

 

 

2018年6月6日に加筆修正しました。

 

Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。