animal two photo

 

 

ウチの猫は抱っこがとんでもなく嫌だそうで、
抱きあげると「ぅわ~お!」と盛大に鳴きます。
志村けん氏を彷彿とさせる「ぅわ~お!」です。

 

にゃ~お、じゃなく、ぅわ~お!
中身はドリフ世代のおじさんなのかもしれない…。

 

犬には、
前世も犬だった犬と前世は人間だった犬がいる。
とは漫画『ハチミツとクローバー』の受け売り。
猫も案外あるいはそうなのかもしれませんね…。

 

今回は猫と犬と人間のおはなし。
蟹に続いてまた動物モノを読んでしまった!
西澤保彦氏『いつか、ふたりは二匹』読了です。

 

 

 

町で起こった女児襲撃事件。
事件の裏には未だ未解決のの誘拐未遂事件。

 

不可解な事件と危険な犯人。
捜査と推理で立ちむかうのは、
小学6年生の男の子・智己(※ただし猫)

 

ねむりにつくと猫の身体に乗りうつれる。
不思議な能力と猫・ジェニイの身体を借りて、
智己は同級生たちを襲った事件に挑んでいく。

 

小学生の心×猫の身体=???

 

いつもよりずっと下からの目線。
スリル満点の推理と冒険の物語。

 

 

西澤氏の作品は、
昔『七回死んだ男』を読んだことがあります。
あちらが印象的だったのでこちらも読んでみました。

 

児童文学のような語り口だなと思ったのですが、
解説によると少年少女向けの叢書発なのですね。
文章はやわらかく1日2日で読めちゃいました。

 

 

不思議な能力。
猫の目線で語られる世界。
町で起きた事件を解決する主人公。

 

ワクワクする設定がふんだんなのに、
驚くのは意外と展開がシビアなこと。

 

たとえば、
猫・ジェニイに乗りうつった智己は
怪しい人物を尾行中に運悪く相手に
見つかってしまう…という場面にて。

 

普通なら「なんだ猫か」と見逃すとか、
機転を利かせて難を逃れるのを期待しますよね。
ところがどっこいジェニイは首を締められます。

 

「おまえ、
自分がお利口さんのつもりなんだろ。え?」

「おまえなんかな、
自分が思うほど賢くないんだよ。
それがいつも、まるで王さまみたいに、
堂々と威張りやがって。え。」

「そうやって、
いつまでもひとのことを馬鹿にしていると、
後悔する羽目になるぞ。
いや、
後悔したくてもできない身体になっちまうんだ。
それを、おれが教えてやる。」

 

猫相手にこんな本気を出すのかと思いますが
(実際、智己自身もそう思っていたのですが)
信じられないことに世の中には本当にそんな
理由で犬や猫、人間だって、殺す人がいます。

 

このあいだも、
公園の湖で首に矢が刺さったカモが
発見されるニュースがありましたね。

 

同級生の女の子は、
友達が亡くなったことに責任を感じ、
そこで衝動的に自殺を考えてしまう。

 

大人や智己(猫)が引きとめたところで、
彼女はいとも簡単に飛び降りてしまう。

 

 

以下ネタバレ部分のため白字表記です。
了承いただける方のみ反転でお読みください。

 

 

きわめつけは、

【 身体を借りていた際の犯人との攻防により 】
【 ジェニイは喉を切られて死んでしまいます。  】

 

 

子供が読むぶんには衝撃的なシーンは多いです。
なんで、どうして、こんなはずじゃ。…ばかり。
だからこそ子供には読んでほしくもあるのです。

 

 

事実は小説より奇なり。

 

残念ながらこの世界は、
小説のようにすべてがこちらの予想どおりとは
決してかぎらないなかなか厳しい場所なのです。
自分の力ではどうにもならないこともあります。

 

ですが、
それを知っていること。
それを悲観せずに人生に組みこむこと。
それだけで肩の荷はちょっと軽くなるのです。

 

大人の説教なんて退屈で聞けませんよね。
だから是非、智己とジェニイから、知ってほしいのです。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。