画面右にある人気記事の一覧をさ、ちょっと、見てくれる?どっかに読書感想文特集の記事ない?2018年版もない?あるとしたら、今、7月下旬か8月。完全に夏。普通に夏休み。

 

 

というわけで、今年も読書感想文の宿題が出てしまった学生のみなさんこんにちは。今年も趣味でほとんど毎日読書感想文とか書いている者です。

 

気づいたときには8月だったのでもうダメかと思ったけど、今年も謎の使命感で読書感想文特集を組みました。今回は去年7月から1年間に読んだ小説の中から読書感想文に使えそうな小説を5冊選出しています。突貫工事。ごめんね。

 

選出基準は相変わらず、読書が苦手な人も参考にしやすいよう文章の読みやすさを前提にしつつ、飽きずに読みきれる個性的な設定と読書感想文の書きやすさを考慮した物語のテーマがわかりやすい作品を選ぶことで当ブログのカラーを出しました。私が実際に読んで「おもしろかった!」と太鼓判を押す小説ばかりなので気になるものがあったらぜひチェックしてみてください。

 

 

 

1. 望月麻衣『京洛の森のアリス』

お金を得るだけが仕事じゃない

両親を亡くし、叔母の家で肩身のせまい暮らしをしてきた少女・ありす。15歳の自分が家を出て生きていくためにはこれしかない!と舞妓になるためやってきたのは京都――ではなく、“自分が心からしたいと思った仕事をして、誰かに必要とされること”だけが求められる異世界の京都だった。

 

自分に嘘をつくとあっというまに老いてやがては消えてしまう。文字どおり、好きなことでしか生きていけない世界。異世界の京都〈京洛の森〉とは、はたして、ただただ理想郷なのでしょうか。あなたにとって、社会にとって、生きていくための「仕事」とはどうあるべきなのか。これから大人になるあなたの言葉でぜひ聞かせてください。

 

 

 

2.スーザン・ヒル『城の王』(幸田敦子・訳)

誰にも気づいてもらえない暗闇

家政婦の母親とともに、これからフーパ―家の屋敷に世話になる少年・キングショー。そこには自分と同い年のフーパ―少年がいた。ぼくのものだ。ぼくの場所だ。誰にも気づかれないまま、必死に居場所を守ろうとする2人の独占欲、凶暴性、自尊心、嫌悪、劣等感がせめぎあう――。

 

たとえば電車の中、必ず座席の端に座りたがる人がいる。必ずドア付近に立ちたがる人がいる。極端に小さくせまい“居場所”に固辞してしまう人たち。それはとても普遍的な人間の暗闇だけど、そのあたりまえの暗闇がときにたった11歳の少年をも追いつめてしまう……。約430ページの絶望をノンフィクションにしないために、私たちは、おたがいになにをするべきだと思いますか?

 

 

 

3.今村夏子『こちらあみ子』

あみ子は「違う」人間なのだろうか

あみ子には前歯がない。3本ない。中学生のとき、恋をしていたのり君に殴られてどこかへ行ってしまったから。そんな風変りなあみ子の過去が小学生時代から明かされる。ひたすらに無邪気だったあみ子にふりまわされ、兄は突然不良になり、母は突然やる気をなくした――。

 

2019年、第161回芥川賞で令和初の受賞者となった今村夏子さんのデビュー作。「みんなちがって、みんないい」とは金子みすずが「わたしと小鳥と鈴と」に記した言葉だけど、この美しい言葉は、誰かの正当性を主張する刃として使うものじゃないはず。遠ざけて、嫌悪して、嘲笑するのは簡単だけど、だからこそあみ子は本当にまわりが思っているとおりの子なのだろうかと考えてみてほしいのです。

 

 

 

4.片岡翔『あなたの右手は蜂蜜の香り』

一途は美談なんかじゃない

幼い頃、森で出会ったヒグマに好奇心で近づいてしまった雨子は、危うく襲われそうになったところを地元の猟友会に運良く助けられる。撃たれたヒグマには子供がいた。親を殺してしまった罪悪感から、雨子は動物園にあずけられた孤独な“あなた”を助けだすため、他の大切なものすべてを犠牲にしてでも飼育員となり故郷の森へ帰してみせると奮闘する――。

 

あなたの大切なものはなんですか?大切なものを一途に想う。想いつづける。私たちはしばしばそれを美談に仕立てあげて礼賛します。だけど、それって本当に美談なんだろうか。大切なものを想うこと。その美しさと、切なさと、そして醜さを見せてくれる1冊です。

 

 

 

5.安東みきえ『頭のうちどころが悪かった熊の話』

※下から2番目の見出しに感想があります。

ヘンテコな生きものたちのシンプルな世界

頭を強く打ったことで最愛の女性のことを忘れてしまった熊、食べてしまった動物のことを悲しむ虎、夢見る無知なカラス、過去・現在・未来にふりまわされる蛇の親子など、ユニークな動物たちが織りなす寓話を7編収録した短編集。

 

どのおはなしも15ページほどで、文章もやわらかいのでサクッと読め、反面、考えやすいテーマと物語なので読書感想文用に読む本としてとっつきやすいと思います。個人的に好きなのは過去・現在・未来についてヘビのユニークな視点から描いた「ヘビの恩返し」と純真でまっすぐなオタマジャクシのハテが愛らしい「池の中の王様」。

 

 


 

 

以上、2018年7月から1年間に読んだ小説の中から選んだ読書感想文におすすめの小説5冊でした。準備不足で突貫工事になってしまったけど、少しでも学生さんたちの助力になればうれしいです。読書が好きな人も苦手な人も、この夏は素敵な本との出会いがありますように。読書感想文、応援しています!

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
読んだ小説の感想や考察を書いています。好きが高じて元小説家志望なので、一篇の物語のように心躍る記事が書ければ。ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれます。小説の他に哲学、美術、神話などの学術本も好きです。