【感想】
  • ああ、これだから本は愛おしい -『書店主フィクリーのものがたり』感想

    ガブリエル・セヴィン『書店主フィクリーのものがたり』(小尾芙佐・訳)を読みました。代官山の蔦屋書店で見つけたんだったかな。帯にある「本を愛するすべての人たちに贈る物語」という文句に偽りなし。遅効性です。とても穏やかな物語なのだけど、本を閉じてしばらく余韻に浸っていると、突然どういう理由であふれてきたのかわからない涙がぽろぽろこぼれてきました。 本を愛するお...
  • きらきらした友情に恋をする -『ナイルパーチの女子会』感想

    柚木麻子『ナイルパーチの女子会』を読みました。前々から読もうかなと目をつけてはいたのですが、最初に手にとったときは文庫裏のあらすじを読んで断念してしまうなど、紆余曲折あって1~2ヶ月前ようやく購入に踏みきった1冊。ぎりぎりまで「自分にはハマらないかもしれない」と予感していたのですが、なかなかおもしろかったです。自分が信じるに値しない人間だと悟った瞬間。紆余曲折なんだったの? ...

    2018年6月6日

  • 明日起こるかもしれない喪失 -『私の頭が正常であったなら』感想

    山白朝子『私の頭が正常であったなら』を読みました。奇妙系に仕立てたゴーストストーリーというほうがしっくりくるけど、作者は怪談専門誌出身だそうだし、ジャンルは「ホラー小説」のくくりでいいのかな。奇談というだけにとどまらず、結末の先に想いを馳せたり、登場人物たちの些細な言動にも考えさせられる粒ぞろいの作品ばかりで不思議な読み心地がクセになる1冊。超好き。 洗練...
  • 人が変われば価値も変わる -『水上博物館アケローンの夜』感想

    蒼月海里『水上博物館アケローンの夜』を読みました。タイトルから察するに博物館が舞台ということで、これは趣味のひとつが美術館・博物館へ行くことである私が見逃すわけにはなるまい、と読んでみたら、東京は上野にある東京国立博物館が出てきました。しまった上野駅の明正堂書店で買えばよかった。秋葉原の有隣堂で買ってしまった。しかも私が好きなのはとなりの国立科学博物館。微妙にズレた位置から手にとり...
  • 大切なものを守るために -『レオナルドの扉』感想

    真保裕一『レオナルドの扉』を読みました。歴史冒険小説…おお、今までさっぱり読んでこなかったまったくの新境地。我ながらよく読もうと思ったよなこれ。歴史とか苦手を通りこしてむしろ興味関心まったくなかった分野なのに。「好き」の反対は「嫌い」じゃなくて「無関心」なんだと前に兄が言っていたけれど、それを読もうとする気概。ショタの力ってすごい。あ、表紙のショタに惹かれて手にとったのバレちゃった...
  • 恋が溶けたあたりまえの底 -『完璧主義男に迫られています』感想

    桜川ヒロ『完璧主義男に迫られています』を読みました。書店をぶらぶらしているときたまたま目にして、タイトルを二度丁寧に読み、「嫌すぎる」とちょっと笑ってしまったので購入。まさかのラブコメ。恋愛小説は普段は滅多に読まないんだけど春は無性に恋愛小説とか読みたくなっちゃいますね。去年か一昨年あたりもやっぱり春に恋愛小説でキュンキュンしたくなって、でも読んだのが山本渚『吉野北高校図書委員会』...

    2018年4月20日

  • 問.石ころを動かすのはなにか答えなさい -『お任せ!数学屋さん3』感想

    向井湘吾『お任せ!数学屋さん3』を読了。お待たせしました!『お任せ!数学屋さん2』からおよそ2年ぶりのシリーズ完結編です。前回『あずかりやさん』を読んだときに「そんなことよりポプラ社は数学屋さん最新作の文庫化をだな…」と内心文句を垂れながら検索したら2017年11月には文庫化されていたという。知らなかっただけという。文庫化を待っているとこういうこと(文庫化するあいだに忘れている)が...
  • 大切なものは目に見えないし、見える。 -『あずかりやさん』感想

    大山淳子『あずかりやさん』を読みました。初読の作家でしたが〈猫弁〉シリーズでおなじみの作家だそうです。タイトルだけチラと聞いたことがあるなぁ。たしか何年か前にドラマ化もしていましたよね。積ん読がいよいよ残りこれ1冊となったあとも「自分に合うかなぁ」と尻ごみして読むまでに時間がかかりましたが、なかなかよかったです。 あえての“不自由さ”がニクい! ...
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佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。