考える
  • 履き違えている人たち -『真夜中のたずねびと』感想

    『夜市』以来、十数年ぶりの恒川光太郎。Twitterでフォローしている方の「非日常の中に流れる日常に紛れる非日常」という感想に惹かれたので、電子でさっそく読んじゃいました。決して避けて通ることはできない家族の強力なしがらみみたいな部分はバリー・ライガの『さよなら、シリアルキラー』(満園真木・訳)を彷彿とさせたりもしつつ、全体的には罪の根本を問いただす物語なのかなと。加害者にとっても被害者にとっても...
  • 「自分の目で見たものしか信じない」は愚か者の戯言だ -『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』感想

    【タイトル】 「自分の目で見たものしか信じない」は愚か者の戯言だ -『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』感想 【リード】 ドラえもん×クレヨンしんちゃんfeat.スーパーサイヤ人でおなじみ(大嘘)の『ファミリーランド』からちょうど1年あまり。久しぶりに澤村伊智です。あらすじ読んだ感じ今回はサクッと読むやつかなーと思ったらやっぱりネタバレ前提の感想しか書けなかった。は...

    2020年11月13日

  • 余白を考えるのが楽しくて9000文字を超えました。-『来世の記憶』感想

    私なんかほとんど毎日読書感想文を書いているんだぞ。 — 佐々木 麦 (@BLT691) August 24, 2017 2020年8月。今年も、自分のブログの人気記事一覧に読書感想文特集が急上昇してきたことで夏の到来を実感しています。学生のみなさんお元気ですか。こちら、ただの趣味でほとんど毎日読書感想文を書いている佐々木麦です。 読書感想文といえば頭を悩ませる...
  • 如何様なイカサマか? -『如何様』感想

    書店で小説を選んでいるときに連れから「これは?」とわたされた高山羽根子『如何様』、「敗戦後」という言葉に食指が動かないなぁ(歴史苦手)と気が進まないまま読んでみたらあっというまに読み終わっていたし作品に想いをめぐらせるのすんごいおもしろかったので特集に組みこむ予定だった感想こねくりまわして1本の記事にしました。 そもそもこの世の多くの場所にとって、坂道は高さの違う...

    2020年1月22日

  • 像をめぐる崇拝と崩壊 -『チェーン・ピープル』感想

    三崎作品といえば中学生だか高校生だかの頃『となり町戦争』から『廃墟建築士』まで首をかしげながら読んだものですが、10年ぶりに『チェーン・ピープル』を読んだらめちゃくちゃ好きなやつだったので『バスジャック』と『鼓笛隊の襲来』と『廃墟建築士』は絶対に読みなおさなきゃ(使命感)と思いました。 正義の味方 相変わらず、私にとって彼はヒーローであり、戦い続ける...
  • 不完全な葦でありたい -『夢みる葦笛』感想

    上田早夕里『夢みる葦笛』を読みました。文庫裏のあらすじに「「人間とは何か」を問う」とあって良書の予感はしたものの、目次を見たとき「これは挫折するかもしれない」と不安もよぎり。積ん読が尽きた頃にようやくおそるおそる読みはじめたのですが、あのね、最高におもしろかった。それでは本書を読んで考えたこと約1万文字、どうぞ。 人間と世界の本質を問う短編集 ある日...
  • 私たちは残酷で愛おしく、危うい -『トランクの中に行った双子』感想

    ショーニン・マグワイア『トランクの中に行った双子』(原島文世・訳)を読みました。以前読んだ『不思議の国の少女たち』の続編ですが、おなじみジャックとジルを主人公に2人がエリノアのホームに来る前の、ヴァンパイアの世界に行った当時の物語なので前日譚と言ったほうがいいでしょう。現実の世界にありながら非現実の世界によりそった前作に対し、こちらは非現実の世界にありながら現実の世界によりそっていた印象、...
  • 絶望の森を抜けて -『城の王』感想

    スーザン・ヒル『城の王』(幸田敦子・訳)を読みました。読後に思ったこと、考えたこと、感じたこと――そのすべてを言葉にして綴るのは難しく、読み返してみると抽象的で短い文章になってしまったのですが、それでも本書と本書を読んだ私の感想はなにより自分のためにここに残しておきたいと強く思ったので、短くても抽象的でも、ありのままを載せることにしました。読了直後にしたためた感想メモほとんどそのままですが...
Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。