ネタバレ注意! 本記事は作者『作品名』の重要な部分または結末について触れていますので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。 |
コニー・ウィリス『クロストーク』(大森望・訳)読みました。めちゃくちゃよかった。
どのくらいよかったかというと、上下巻、各500Pぐらいあるのを正味3日で読んだし、読んでないときもブリディとCBが最後どうなるかという妄想で時間潰せる程度にはよかったです。悶えすぎて身体がねじりほんにょになるかと思った。ところで、宮城県栗原市のマスコットキャラクター・ねじりほんにょはかわいい。
「あなたとそんな議論をするつもりはありません」ブリディは硬い声で言った。「関係ないでしょ」
「あるとも。この会社でぼくが話せる相手はきみだけなんだ。もしきみが植物――」
(上巻P38/L2~4より引用)
しんどい。
引用前後の会話はキスとかセックスとか、植物人間とか、そもそもこの時点のブリディは恋人と“感情的につながる”脳手術を受けようとしていてCBはそのリスクを訴えているわけだけど、そんなことより会社でまともに話せる相手がブリディしかいないCBくんかわいすぎん?これだけで白飯3杯食べれそう。
〈CB!〉心で叫び、彼に向かって必死に手を伸ばした。
すると、そこに彼がいた。頭の中ではなく――現実のタイル張りの床の上、ブリディのすぐ横にしゃがみ込んでいる。デニムのジャケット、スター・ウォーズのTシャツにネルのシャツ、片手をブリディの腕にのせて「もうだいじょうぶ、ほら、来たよ」と何度も何度もつぶやいている。
(上巻P404/L6~10より引用)
でもさぁ!そんなぶきっちょなのに、わからず屋のブリディに何万回「消えて」って言われても、彼女の窮地には必ず助けに来てくれる白馬の王子様なんだよなぁぁぁCBは!!性癖すぎてつらい!!もうねじりほんにょ通り越してちぎれほんにょになっちゃう!!んんんんんぶちぶちぶちぶち!!
※ここまでオタク特有の早口でお送りしています。
というわけで、中身についてはもはやなににも触れていないけど、個人的には久しぶりに萌える小説でした。安萬純一の『王国は誰のもの』とか葉山透の『それは宇宙人のしわざです 竜胆くんのミステリーファイル』、チャーリー・N・ホームバーグ『紙の魔術師』(原島文世・訳)、望月麻衣『京洛の森のアリス』とかに匹敵する尊さ。
最終的にコムスパンがどうなるのかとか、一応言葉で説明されてるけど実際にどうなったかリアルタイム描写または後日談的なものがなかったので、レイオフの話ってどうなった?とか、トレントとの関係どうやって清算するの?とか、もろもろ尻切れトンボで消化不良な感じもあったんですけど、まぁ、私は尊いものを目に焼きつける”防御線”こと壁なので、2人が幸せならそれでいいっす。
最後に真面目な話をすると、本書の主題は人の心が読めるのは福音か呪いかという話で、もちろんそれは状況やその人次第なわけだけど、人間がこれほどまでに他者を求めてしまうのは、相手がなにを考えているのかわからない、その不確実がある種快楽になっているからなのかなと。行為は、その行為による報酬が必ず与えられるとわかっているときよりも、不確実に与えられるときのほうがより効果的に強化される。ギャンブルやSNSの依存と同じですね。
今私たちに必要なのは、情報を収集するツールやスキルではなく、情報を選んでシャットダウンするセーフルームと防御線なのかもしれない。そしてそれは、私たちが自ら心の内側でつくらなければいけないものなのです。
ちなみに、さっき挿入した横線、あれが当ブログの防御線です。オタク特有の早口を完全シャットダウンするためのね。