日常・人生
  • 佐々木麦は君が好き -『麦本三歩の好きなもの』感想

    20字以内で説明できる小説はいい小説なのだと聞いたことがある、と書かれているので、挑戦してみる。 好きなものをとても大切にしている人の話。 まさか本当に20字(ぴったり!)で収まるとは思わなかった。すげ。まぁ、これから感想に100倍ぐらいの文字数使うんですけどね。 筆名が「佐々木麦」なものだから、主にタイトル的な意味でずーっと気になっていて...
  • 本当に、箱とキツネとパイナップルの話 -『箱とキツネと、パイナップル』感想

    ある小説家が以前、タイトルは小説にとってもっとも長期的に打てる広告、みたいなことをTwitterに投稿していた。かえってそれを意識しすぎているのか、映画のポスターなど、日本の広告は情報を過度に説明しすぎるきらいがある。出版業界でいえば、文章がそのままタイトルになってしまうことも今や珍しくない。 その観点からすると、村木美涼の小説『箱とキツネと、パイナップル』は巧いタイトルだなとつくづ...
  • 私は1人の人間についてどれだけのことを語れるだろう -『壁の男』感想

    たとえば、こんなシチュエーションを想像してみる。「あなたが尊敬している人物は誰ですか?」と面接官に問われた私は、適当な名を挙げ、さらに具体的な理由を説明しようとしている。そのとき私は、1人の人間についてはたしてどれだけのことを語れるだろう――。貫井徳郎『壁の男』を読んで最初に浮かんだ感想はそれでした。私は今このときほど他人の人生によりそったことなど、じつは一度もなかったんじゃないか、と。 ...
  • 如何様なイカサマか? -『如何様』感想

    書店で小説を選んでいるときに連れから「これは?」とわたされた高山羽根子『如何様』、「敗戦後」という言葉に食指が動かないなぁ(歴史苦手)と気が進まないまま読んでみたらあっというまに読み終わっていたし作品に想いをめぐらせるのすんごいおもしろかったので特集に組みこむ予定だった感想こねくりまわして1本の記事にしました。 そもそもこの世の多くの場所にとって、坂道は高さの違う...

    2020年1月22日

  • とある読書ブログの画竜点睛 -『線は、僕を描く』感想

    最近は平藤喜久子『いきもので読む、日本の神話 身近な動物から異形のものまで集う世界』(ホリナルミ・絵)を読んだりね、1~2ヶ月に1冊ぐらい学術書とかビジネス書とか読んでる私なんですけど、いやぁ、先日とんでもないインプットの塊に出会ってしまったんですよ。ご存知ですか?砥上裕將『線は、僕を描く』っていう小説なんですけど。 物語としては、両親を事故で亡くしてから孤独な大学生活を送っ...

    2019年11月14日

  • 苦しんでいるあなたに私の大好きな言葉を読んでほしい -『貸し本喫茶イストワール 書けない作家と臆病な司書』感想【再読】

    ベッドからこんにちは。麦です。今、絶賛、頭痛。というのもね!読書の秋だし本にまつわる小説でも読もうかな~と軽い気持ちで川添枯美『貸し本喫茶イストワール 書けない作家と臆病な司書』を読んだんですが、3回泣いた。そして感極まりすぎて頭痛発症。「考え事すると、すぐ頭痛くなっちゃうの」とはヒロイン・文弥子の言ですが完全にそれ。冷えピタ貼りながらで失礼しますがとにかく聞いてくださいよ、4年ぶりに読ん...
  • 奇妙が侵入してくる -『私たち異者は』感想

    スティーヴン・ミルハウザー『私たち異者は』(柴田元幸・訳)を読みました。最近とんと観ていないけど、タモリはさ、今でも「次に奇妙な扉を開けるのはあなたかもしれません」みたいなこと言ってるわけでしょ? でもさ、この小説は違うんだよ、自分のほうから扉開けて入ってくるの。巧妙に、ちょっとずつ、ちょっとずつ。あとはただ穏やかに絶望。こわい。 ミリ単位まで見逃さないリアルタイ...
  • 偶然は必然かもしれないこの世界がおもしろくて愛おしい -『偶然仕掛け人』感想

    ヨアブ・ブルーム『偶然仕掛け人』(高里ひろ・訳)を読了しました。たとえば、今日コンビニで選んだあのお菓子、道端でばったり会った友人、トイレに忘れてきたハンカチ――私の人生において“偶然”だと思っていたあれもこれも、じつは誰かによって意図されたものだったとしたら?世界のあらゆる偶然を操作する〈偶然仕掛け人〉があたりまえにひっそりと存在する世界を舞台にした現代ファンタジー。読めばきっと、あなた...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。