• 無理難題の舞台で踊れ -『タイトルはそこにある』感想

    堀内公太郎『タイトルはそこにある』を読みました。「担当編集者が繰り出す五つの難題を前に、鬼才はいかなる作品を書き上げたか?」という帯の宣伝文句に惹かれて購入しましたが、うーん、小説技法としての個性や巧さには目を丸くするものの物語性に乏しく思っていたような読後感を得られませんでした。とはいえ、これは私が勝手に期待の仕方を間違えてしまっただけなので感想は責任を持ってしっかり書きます。 ...
  • 僕らはなぜ秘密基地をつくったのだろう -『クローディアの秘密』感想

    カニグズバーグ『クローディアの秘密』(松永ふみ子・訳)を読みました。以前読んだカブリエル・セヴィン『書店主フィクリーのものがたり』(小尾芙佐・訳)の中でマヤが読んでいた児童文学で、ある姉弟が家出をして大きな美術館に隠れる、という設定に惹かれたのがきっかけ。姉弟と美術館。どちらも大好きな要素なのでさっそく書店で探してきて迷わず購入しました。岩波少年文庫はミヒャエル・エンデ『モモ』(大...
  • To be , or not to be … -『憂鬱な10か月』感想

    イアン・マキューアン『憂鬱な10か月』(松村潔・訳)を読みました。主人公がまさかの〇〇という前代未聞の設定に惹かれて手にとらざるをえなかった。古典文学風の趣があり非現実的な物語のように見えるのですが、その一方で人間の本質や本能については嫌になるほどリアルで考えさせられる。万人には決して勧められないクセがありますが設定のユニークさだけに依存しないしっかりした読みごたえのある1冊です。...
  • ああ、これだから本は愛おしい -『書店主フィクリーのものがたり』感想

    ガブリエル・セヴィン『書店主フィクリーのものがたり』(小尾芙佐・訳)を読みました。代官山の蔦屋書店で見つけたんだったかな。帯にある「本を愛するすべての人たちに贈る物語」という文句に偽りなし。遅効性です。とても穏やかな物語なのだけど、本を閉じてしばらく余韻に浸っていると、突然どういう理由であふれてきたのかわからない涙がぽろぽろこぼれてきました。 本を愛するお...
  • きらきらした友情に恋をする -『ナイルパーチの女子会』感想

    柚木麻子『ナイルパーチの女子会』を読みました。前々から読もうかなと目をつけてはいたのですが、最初に手にとったときは文庫裏のあらすじを読んで断念してしまうなど、紆余曲折あって1~2ヶ月前ようやく購入に踏みきった1冊。ぎりぎりまで「自分にはハマらないかもしれない」と予感していたのですが、なかなかおもしろかったです。自分が信じるに値しない人間だと悟った瞬間。紆余曲折なんだったの? ...

    2018年6月6日

  • 明日起こるかもしれない喪失 -『私の頭が正常であったなら』感想

    山白朝子『私の頭が正常であったなら』を読みました。奇妙系に仕立てたゴーストストーリーというほうがしっくりくるけど、作者は怪談専門誌出身だそうだし、ジャンルは「ホラー小説」のくくりでいいのかな。奇談というだけにとどまらず、結末の先に想いを馳せたり、登場人物たちの些細な言動にも考えさせられる粒ぞろいの作品ばかりで不思議な読み心地がクセになる1冊。超好き。 洗練...
  • 『水上博物館アケローンの夜』からはじめる!東京国立博物館

    !ネタバレ注意! 本記事には蒼月海里『水上博物館アケローンの夜』のネタバレおよびネタバレとなるワードを使用した箇所があります。作品を既読している、または、これを承諾する場合のみ読んでいただきますようよろしくおねがいします。 先日読んだ小説、蒼月海里『水上博物館アケローンの夜』の舞台となった東京国立博物館に行ってきました。となりの国立科学博物館なら...

    2018年5月24日

  • 第26回文学フリマ東京に行ってきました

    5月6日、第26回文学フリマ東京へ行ってきました。第20回、第22回、書いていないけど第25回につづいて4回目の文学フリマですが未だにあのランウェイ慣れません。視線恐怖症には苦痛。あそこを歩いているといつもポケモンの初代だか金銀だかを思いだします。サイクリングロードとかにこういうところなかったっけ。それはさておき、今回も文学フリマでの出会いや交流、買ってきたものなどを記していきます。 ...

    2018年5月21日

Ranking
Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。